下肢静脈瘤の治療法
2014年に2種類の下肢静脈瘤の治療が保険適用となりました。1つは波長1470nmレーザーによるレーザー治療、もう1つは高周波治療で、ラジオ波治療とも呼ばれています。どちらも厚生労働省が正式に認可した治療であり「下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術実施施設」であれば日本全国どこでも保険診療で治療を受けることができます。
保存的治療(医療用弾性ストッキング)
医療用弾性ストッキングを履いて、足を圧迫することで表在静脈の血液の逆流をおさえ、深部静脈への血液の流れを助けます。この圧迫療法は、あくまでも進行防止・現状維持が目的で、静脈瘤そのものが治るわけではありません。
メリット |
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デメリット |
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硬化療法
静脈瘤に固める薬(硬化剤)を注射した後、弾性包帯で圧迫して血管を固め、静脈瘤をつぶしてしまうという治療法です。固まった血管は時間経過で次第に萎縮して消えていきます。
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ストリッピング手術(静脈抜去術)
下肢静脈瘤の根治的な治療法として古くから行われている手術です。弁不全を起こしている静脈を引き抜いてしまう方法です。足の付け根や膝の皮膚を2〜3cm切開し、弁不全を起こした表在静脈の中に手術用ワイヤーを通して、血管自体を引き抜いてしまいます。局所麻酔(TLA麻酔)で行います。
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静脈瘤レーザー血管内治療
静脈の中に細いファイバーカテーテルを挿入し、その先端から静脈内にレーザーを照射し、レーザーの熱で静脈を閉塞する方法です。
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静脈瘤高周波血管内治療
高周波治療は、レーザー治療と同様に血管に細いカテーテルを入れて、内側から血管を焼く治療です。高周波治療では光ファイバーの代わりに専用のカテーテルを使います。このカテーテルに高周波電流を流して120℃に熱して7cmずつ血管を焼いていきます。一度に7cmずつ焼けるので治療時間が短いのと温度を自動制御するので常に一定の条件で治療することができます。日本では初めて保険適用となりますが、米国ではレーザー治療と同じぐらい普及しています。ちなみに高周波とは周波数の高い交流電流のことで、ラジオ波とも呼ばれています。
合併症
手術方法の違いによらず、以下の合併症の可能性があります。
アレルギー反応
麻酔薬や硬化剤に対するアレルギー反応は起こることがありますので、今までに薬で何らかの異常があった方は診察時に必ずお申し出ください。
感染、創離開
皮膚切開部は手術直前に十分に消毒をし、清潔機材を用いて行いますが、菌の混入による感染の可能性があります。傷口が小さいほどまた、操作時間が短いほど感染の可能性は減少します。
疼痛
傷口の痛みは手術直後よりありますが、日に日に軽減をいたします。また手術により固まった静脈瘤は腫瘤として触れ、歩く時に“引き連れ痛”を認めることがありますが、痛みは1週間前後で軽減し、固まった静脈瘤は3〜4ヶ月で自然吸収します。
皮下出血
傷口周囲、又は静脈を抜去したりレーザーで焼いた部分に発生しますが、1〜2週間で自然と消失します。細かい血管は、硬化剤の注入によって固まらずに散ってしまうことで皮下出血になりますが、これも同様に1〜2週間で消失します。
血栓性静脈炎
静脈瘤内に多く血液を残して固まった時に認められます。血管が炎症を起こして赤く腫れて痛むことがあります。血管内に残った血液量によりますが、多くは1週間ほどで次第に改善します。痛みが強い時にはお申し出ください。
水疱
手術後のテープによる圧迫により生じることがあります。心配はありませんが、むやみに潰すと化膿することもありますので、大きい水疱のときはそのまま診察にお越しください。
色素沈着
静脈瘤の上の皮膚は薄くなっているので、硬化剤を注入した後や血栓性静脈炎を合併した後に皮膚の色素沈着がみられる事があります。ほとんどの色素沈着は6〜12ヶ月でほぼ消失しますが、中には薄く残ったり多毛を生じることがあります。
神経損傷
長期間残存する可能性のある合併症で、下腿(ふくらはぎ)内側のシビレ感、知覚鈍麻などです。知覚神経の損傷によるもので、脚の運動機能が障害されることはありません。時間は掛かりますが、徐々に知覚異常の範囲は狭くなります。当院の手術方法では1%以下の発生率と考えております。
再発
再発率は、治療方法により違ってまいります。遺伝性のものや、組織学的に正常に近い静脈瘤、若年性の静脈瘤には再発も多くみられます。万一再発が見られても、静脈瘤の治療方法を変え繰り返して行うことができるので心配はいりません。
深部静脈血栓症
術後に深部静脈の中に血栓を生じてしまうことがあります。術後に長時間の安静状態でいますと発生してしまう可能性が高いと考えられます。当院の日帰り手術のように術後の早期歩行、弾性ストッキングの着用により発生はなくなります。
肺動脈塞栓症
深部静脈内の血栓が飛び、心臓を介して肺の血管を詰めてしまう病気です。上記のように弾性ストッキングの着用と術後早期に歩行することにより深部静脈内血栓を生じませんので、発生はきわめて少ないと考えます。