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第1回 内視鏡でできる!早期胃がんの発見から治療まで


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●テーマ/内視鏡でできる!早期胃がんの発見から治療まで
●講師/森 昭裕 医師
(一宮西病院 副院長、内科統括部長、消化器内科統括部長、内分泌・糖尿病内科統括部長、消化器内視鏡センター長)

ほぼ症状がない早期胃がん 出血や痛みがあれば要注意

始めに胃がんの症状についてお話します。がんの組織は正常の組織と比べてもろく崩れやすいので、出血しやすく、吐血や黒色便などの症状が現れます。出血するということは貧血にもなります。胃がんは大きくなると食物が食べにくくなるので体重が減り、進行すれば胃の痛みや胃のもたれなどの症状も出ます。ただ、早期の胃がんは、ほとんど症状がありません。それは胃の構造に関係があります。胃袋は大きく分けて内側から順に、粘膜・粘膜下層・固有筋層という三層構造になっています。胃に痛みを感じるのは外側の固有筋層に刺激があるときで、粘膜の表面は痛みを感じません。固有筋層に達していない粘膜下層までの腫瘍を早期胃がんというので、ここにがんがあっても症状がないのは当たり前なのです。症状が出てから胃がんを見つけていては治療が遅くなるということが、おわかりいただけたかと思います。

胃がんの原因はピロリ菌 世代によって感染率に開き

次に胃がんの原因についてです。昔は胃がんの原因がわかっていませんでしたが、1980年代後半に「ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)」の慢性感染が原因だということがわかりました。ピロリ菌の感染率は年齢によって大きく違い、40歳以上の人は感染率が高く、40歳以下の人は低いと言われ、特に中学生の感染率は10%以下と言われています。これには衛生環境が大きく影響していて、汲み取り式トイレが多かった世代はピロリ菌の感染率が高く、水洗トイレが普及して一般的になった世代ではピロリ菌の感染率が低いというデータもあります。ピロリ菌は抵抗力が弱い幼児期に感染するのが特徴で、何十年も胃の中に居続けて慢性萎縮性胃炎を引き起こし、最終的には潰瘍やがんをつくります。つまり、ピロリ菌に感染しておらず、慢性萎縮性胃炎がない人は、胃がんになることはまずないということです。ピロリ菌は簡単に除菌することができ、抗生物質を中心にした薬を7日間服用することで6割~9割を駆除できます。ただ、除菌しても胃がんにならないのではなく、胃がんになる確率が下がるだけなので、除菌後に必ず胃カメラ検査によるフォローは必要です。日本の衛生環境の良さから胃がんはこれから減少していくでしょうが、今はまだピロリ菌に感染している可能性がある人も多いので、検査を受けることをおすすめします。

苦痛の少ない経鼻内視鏡検査 まずは「ABC検診」から

さて、胃がんになりやすい人を見つけるには、ピロリ菌に感染している人や慢性萎縮性胃炎がある人を見つけ、胃カメラの検査を行うことが有効です。「ABC検診」という血液検査では、ピロリ菌に感染しているかどうか、慢性萎縮性胃炎があるかどうかの両方がわかります。この検査が陽性の人に絞って胃カメラ検査を行えば、胃がんを早期発見できる可能性が高まります。胃カメラでなくバリウム検査でもいいのではと思う方がおられるかもしれませんが、ぜひ知っておいていただきたいのは、バリウム検査は死角が多いため胃の2/3ほどしか確認できないということです。そのため早期胃がんを見つけるのが困難で、進行がんでさえ見逃してしまうケースもあるのです。ですから胃カメラによる検査が望ましいのですが、喉の奥を刺激されて起こる嘔吐反射の辛さに抵抗を感じ、胃カメラを敬遠される方も少なくありません。そのような方に適しているのが経鼻内視鏡検査です。鼻からスコープを入れるため、舌に当たったり喉の奥に刺激を与えたりすることはありませんし、検査中に医師と会話ができるので、最初は緊張している患者さんも次第にリラックスしていきます。また、鼻専用のカメラですから、直径約6㎜以下と細く、特に鼻の穴が小さい人向けの4.9㎜のものもあります。

内視鏡による治療も可能 早期発見、早期治療を

鼻から物を入れても大丈夫かと心配される方もおられますが、もちろん適切な麻酔を行います。まずアレルギー性鼻炎の点鼻薬の薬をスプレーして鼻の穴を広げ、次に専用の器具を使って鼻にしっかりと麻酔液を塗っていきます。経鼻内視鏡検査は嘔吐反射がないので胃の動きを止める筋肉注射はしませんし、意識をなくす注射もしないので、呼吸停止などの心配がありません。また、行動制限がないため、検査が終われば仕事をすることもできます。また、経鼻内視鏡は小さくても画質はとても良く、数ミリほどのがんの血管の形まで十分見ることができます。したがって、粘膜にできた早期胃がんを発見することが可能なのです。さらに、早期の胃がんであれば、手術をせず胃カメラで切除することができます(※口から入れる経口内視鏡での治療となります)。ただし、この治療はがんをはぎ取っていく方法なので、胃の浅い部分にできたがんにしか適用できません。だからこそ、適切な検査を行って胃がんを早く見つけることが重要なのです。胃がんは減少傾向にありますが、がん死亡原因の上位を占めており、多くの方が苦しんでおられます。早期治療のためには早期発見が肝心です。ABC検診で胃がんになりやすいかどうかを調べ、内視鏡で早期発見、早期治療をめざしましょう。