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第10回 きちんと治そう!心臓や血管の病気


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●テーマ/きちんと治そう!心臓や血管の病気
●講師/菊地 慶太 医師(一宮西病院 ハートセンターセンター長、心臓血管外科統括部長)

心臓の役割や病気を知る

心臓の役割や心臓血管の病気、動脈硬化症、狭心症や弁膜症などの病気、体への負担が少ない治療などについてお話しします。まずは心臓の役割についてです。心臓は右側の部屋と左側の部屋にわかれており、右側の部屋は肺に血液を送り、左側の部屋は全身に血液を送っています。つまり心臓は、人間の体が機能するための血液を肺や全身に流すポンプの役割をしています。心臓が上手く機能しなくなると、全身の血液の巡りが悪くなります。血液は酸素を運んでいるため全身が酸欠状態になってしまい、脳や腎臓、肝臓、腸などさまざまな臓器に不具合が生じます。心臓は、あらゆる臓器が機能するための重要な臓器ということです。心臓が上手く機能しないとどのような症状が起きるかというと、ドキドキする、胸が締め付けられる、重苦しいなどです。痛みの症状もありますが、心臓の痛みの場合、手を広げて「このへんが痛い」と表現される方が多く、「ここが痛い」と指でさし示せる場合は心臓が原因でないことがほとんどです。また、放散痛によるあごや肩の痛みや、まれにみぞおちの痛みがあったりもします。なかでも怖いのは突然死で、元気だった方が突然命を落とすこともあります。痛みや苦しさがある場合は必ず医療機関を受診してください。こういう話を聞くと怖いと感じられると思いますが、一番良くないのは、気になる症状があるのに見ないふりをしてしまうことです。大切なことは病気から逃げずに正しい診断を受け、病気を知り、正しい治療を受けることです。

心臓の病気から身を守るために大切なこと
① 病気から逃げない
② 正しい診断を受ける
③ 病気を知る
④ 病気に負けない気持ちを持つ
⑤ 正しい治療を受ける

動脈硬化は万病のもと

心臓や血管の病気についてお話ししますが、その前に動脈硬化症のことを知っていただきたいと思います。動脈硬化症によって起こる病気は、狭心症や心筋梗塞、大動脈弁狭窄症、大動脈瘤、脳梗塞、腎不全などたくさんあります。さまざまな病気を引き起こす動脈硬化とは、何なのでしょうか。動脈の壁は、内側から内膜・中膜・外膜という3層構造でできており、この3層構造の壁が悪くなってしまう状態を動脈硬化と言います。動脈硬化を招く主な原因のひとつがコレステロールです。コレステロールが血管の壁に悪い影響を与え、血管の弾力性が失われて硬くなり、次第にコレステロールが沈着して壁が腫れ、血液の流れを悪くしてしまいます。また動脈硬化は硬くなるだけでなく、粥腫というぐじゅぐじゅしたお粥のようになる粥状硬化というものもあります。しかし動脈硬化のなかで一番多いのは、中膜にカルシウムが付いて石灰化してしまう中膜硬化です。動脈が石のように固くなってしまいます。また、脳の血管に起こる細動脈硬化症というものもあります。一概に動脈硬化といってもさまざまで、症状なく進行するのが怖いところです。動脈硬化症の4大原因は高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙と言われています。内臓脂肪を溜めてしまうメタボリック症候群は動脈硬化を促進させるので、生活習慣を見直してタバコを止めたり、塩分を控えたり、脂っこい食事を止めたりすることが肝心です。

狭心症と心筋梗塞について

では、心臓や血管の病気について詳しくお話ししていきます。まずは狭心症や心筋梗塞についてです。先程、心臓は全身に血液を送ると言いましたが、心臓自体に血液を送る血管(冠動脈)にも血液を送ります。冠動脈は心臓の根元から出ています。冠動脈が動脈硬化によって詰まってしまう病気を心筋梗塞と言い、詰まってはいないが狭くなって血の巡りが悪くなった病気が狭心症です。狭心症の症状には胸の苦しさや重さ、動くと左肩が痛い、あごが痛いなどがあります。心筋梗塞の症状はさらに、あぶら汗が出るようなかなり激しい痛みが15分以上続きます。もしこのような症状があったら、すぐに救急車を呼ばなければいけません。狭心症の検査では、まず血液検査や心電図検査を行い、狭心症の疑いが強いと判断したら外来でできるCT検査を行います。次にカテーテル検査を行って、どのように狭くなっているかを正確に確認します。狭心症の治療法は病状によってさまざまで、軽症の場合、まずは薬を使った治療を行います。次によく行われるのが、患者さんの体への負担が少ないカテーテル治療です。カテーテル治療とは、血管が狭くなったり詰まったりしているところに細い管を通し、ステントというコイルを入れて血管を内側から広げる治療です。そして次に、バイパス手術などの外科的な治療を行います。バイパス手術とは、血管が狭くなっている部分の先に内胸動脈や胸骨動脈、胃大網動脈などを使って、道をつくる手術です。手術の方法は、胸の骨を縦に真っ直ぐ切って広げて行うのが一般的で、日本では人工心肺を使わないOPCAB(オプキャブ)というバイパス手術が6割以上を占めています。

心臓の弁が悪くなる弁膜症

次に弁膜症についてお話しします。心臓は右側に右心室、左側に左心室という大切な2つの部屋があり、それぞれの入口と出口に2枚ずつの弁があります。弁が交互に開閉することで血液の巡りを一方通行にしていますが、この弁が上手く開閉しなくなる病気を弁膜症と言います。左心室の入口にある僧帽弁と、大動脈に直結する大動脈弁に多い病気で、弁が上手く開閉しないため心臓のなかの血液の量が多くなり、心臓が大きくなってしまいます。坂道を上ったり階段を歩いたりすると息が切れる、不整脈が出る、何でもないのに肩で息をする、胸が締め付けられるように痛むといった症状のほか、いきなり意識を失ってしまうこともあります。弁膜症の検査では、レントゲン検査や超音波検査などを行います。治療は、まずは薬物治療を行いますが、基本的には手術治療が主になります。弁膜症の場合、弁の形の不具合や開閉しないといった状況なため、手術で治さなければならないのです。弁膜症の手術は、悪くなった弁を修復する形成手術と、人工弁を入れる人工弁置換術があります。人工弁にはカーボンなどの金属でできた機械弁と、生体組織でできた生体弁の2種類があります。機械弁は耐久性が良く30~40年持ち、主に50代の方に使われています。ただ、血栓ができやすいため、抗凝固薬を毎日必ず飲む必要があります。一方、牛や豚の生体組織でできた生体弁は抗凝固薬を飲む必要はなく、日本では65~70歳以上の方に多く使われています。弁膜症の一般的な治療法は手術ですが、近年ではTAVI(タビ)というカテーテルによる治療も増えてきています。ただ、現在は全身状態の悪い方を対象としています。

破裂したら命取り大動脈瘤

次は大動脈瘤についてです。大動脈瘤の大きな原因は高血圧やコレステロール、動脈硬化で、特に高血圧は要注意です。基本的に症状はなく、だんだん瘤が膨らんで、いずれ破裂してしまいます。破裂すると半数ぐらいの方は病院にたどり着く前に命を落とし、手術をしても70%くらいの方しか助けられません。そのため、破裂前の診断・治療が大切です。大動脈瘤が1年で急激に大きくなることはまれなので、心臓ドックや血管ドックなどの検診を受けることが重要です。治療はCT検査で瘤の大きさを確認して行っていきます。一概に大きさだけで判断はできませんが、基本的にはガイドラインに準じて治療を行います。近年、大動脈瘤の治療方法は開胸手術ではなく、足の付け根を2カ所ほど切開して行うステントグラフト治療が主流になっています。手術の傷が小さくて済み、痛みが少なく術後の回復も早いので、術後も快適に生活することができます。

負担が少ない低侵襲手術

近年、胸の骨を切らず、肋骨の間を広げて行う低侵襲心臓手術(MICS)が行われはじめました。現在では弁膜症や冠動脈バイパス手術、一部の大動脈手術などでこの治療ができるようになっています。外科的治療と内科的治療を組み合わせた手術も行われています。いろいろ怖い話もしましたが、医療はどんどん進化していて、患者さんにとって安全で身体への負担が少ない治療法がたくさん出ているということを、ぜひ知っておいてください。