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第12回 肺がんのお話 ~予防から治療まで~


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●テーマ/肺がんのお話 ~予防から治療まで~
●講師/竹下 正文 医師(一宮西病院 呼吸器内科副部長)

初期症状が出にくい肺がん 4~5割は転移した状態で発見

日本では肺がんが増加傾向にあり、年間11万~12万人が肺がんを発症しています。ほかのがんに比べて死亡者数も多く、年間約7万4千人の方が肺がんで亡くなっています。また、肺がんは転移しやすい性質があり、見つかった時点で4~5割の方が脳や骨、肝臓、副腎(腎臓の傍にある臓器)などに転移しています。肺がんは初期症状が出にくいことから早期発見が難しいがんですが、早期発見できれば約8割は治すことができるがんでもあります。では、どうすれば早期発見できるかというと、やはり肺がん検診を受けることが有効です。肺がん検診の目的は、がんを見つけるだけでなく死亡率を下げることです。肺がんは検診による早期発見、早期治療によって死亡率が低下することが証明されているものの、愛知県の肺がん検診受診率は50%を切っています。今日はぜひ、肺がん検診を受けることの大切さを皆さんに知っていだだきたいと思います。

一番のリスク因子はタバコ 禁煙は大きな効果あり

まず始めに、肺がんの発生部位や原因、症状についてお話しします。肺は右と左に一つずつあり、右の肺は上葉・中葉・下葉に分かれ、左の肺は上葉と下葉に分かれています。肺がんはどこにでもでき、太い気管に発生するがんを中心型肺がん、肺の奥のほうに発生するがんを末梢型肺がんと言います。肺がんの一番のリスク因子は喫煙です。タバコには人体に有害なものが200種類以上入っていて、それらが肺がんの発生を誘引すると考えられています。年齢が若いほど、1日の喫煙本数が多いほど肺がんのリスクが高まりますが、20年間禁煙すると非喫煙者と同じぐらいまでリスクを下げることができます。ほかのリスクにはアスベスト、受動喫煙、肺気腫や間質性肺炎など呼吸器疾患などがあります。肺がんの症状は咳や痰・喀血、息切れ、胸の痛みなどで、肺がんが周囲の神経に浸潤すると「声がれ」といった症状も見られます。ただ、これらの症状は風邪や呼吸器疾患などでも見られ、肺がん特有ではないため、症状から早期発見することが難しいのです。だからこそ、先にお話ししたように肺がん検診を受けることが大切なのです。

検診対象は40歳以上の男女 年1回の検診で早期発見を

肺がん検診の対象となるのは40歳以上の男女で、受診は年に1回です。内容は基本的に問診と胸部レントゲン写真ですが、50歳以上の喫煙者は、1日の喫煙本数と喫煙年数をかけた指数に応じて喀痰細胞診を行います。2㎝以下の腫瘍はレントゲンではわかりにくいため、検診で異常が見つかった場合は必ず精密検査を受けてください。肺がんの検査は、治療の方向性を決めるために行います。3段階に分けて進められ、まずレントゲンやCTで肺に影があるかどうかを見ていきます。肺がんが疑われたら、気管支鏡検査などで細胞を採取し、がんの種類を決める確定診断を行います。次に、MRIやCT、PET検査などで全身への拡がりを見る病期診断を行います。肺がんの細胞には特徴があり、特徴によって小細胞肺がんと非小細胞肺がんに分類され、非小細胞肺がんはさらに腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんに分類されます。タバコを吸わない女性は腺がんが多く、タバコを吸う方は扁平上皮がん、小細胞がんが多いとされています。どの分類のがんなのかをしっかり診断することが、治療の大きな助けとなります。

がんの種類や患者さんの年齢など、様々な情報から最適な治療を決定

肺がんの治療には、手術や放射線治療といった局所療法、抗ガン剤・分子標的治療・免疫療法などの全身療法、緩和ケアがあります。緩和ケアは終末期のイメージがあるかもしれませんが、最初から痛みがある場合や、精神面のケアに必要となる場合があるため、現在は早期から取り入れられています。がんの種類や拡がり、年齢、臓器機能、全身状態、本人の意志などを総合的に見て、患者さんとよく相談して最適な治療方法を決めていきます。

身体的負担の少ない胸腔鏡手術 技術が高まる放射線治療 薬物療法は3つの柱で

具体的な治療についてですが、局所療法のうち手術は根治を目的に行います。手術が適用できる条件は、がんが限られた範囲にとどまり、全身状態が手術に耐えられることです。最近では、胸に小さな穴を3つ開けて処置具を差し込む「胸腔鏡手術」が主流となっていて、傷や痛みなどの身体的負担が少なく早めに退院することができます。

もう一つの局所療法、放射線治療は目的が2つあります。1つは根治で、もう1つは、症状がある部位に放射線を当てて症状を緩和することです。たとえば、年齢や合併症などで手術を受ける体力がない方や、脳への転移で吐き気や頭痛の症状がある方などに放射線治療を行います。最近では照射技術の向上やコンピューター制御により、合併症も軽減されています。

次に薬物療法についてです。薬物療法は抗がん剤、分子標的薬、がん免疫療法の3つがあります。抗がん剤は、がん細胞と同時に正常な細胞も叩いてしまうため副作用が出るという特徴がありましたが、分子標的薬はターゲットをがん細胞に絞って叩くため、効果が高くて副作用が軽い治療と言われています。がん免疫療法は、投与した薬ががんを叩くのではなく、薬が自分の免疫細胞を活性化させ、それががんを叩くという治療です。

進歩する肺がん治療 喫煙習慣が最大の危険因子

私が研修医になった17年ほど前は、進行した肺がんの治療は抗がん剤しかありませんでしたが、現在では治療法が大きく進歩し、採取したがん細胞から遺伝子の変化などを調べ、患者さんに合った薬を選ぶようになっています。また、抗がん剤と免疫療法を組み合わせる併用療法も始まり、肺がん根治の可能性の高まりが期待されています。

肺がんの危険因子は喫煙です。肺気腫や慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎なども肺がんになりやすいと言われていますが、それでも一番の危険因子は煙草です。喫煙習慣のある人は、それがない人と比較して、男性で4~5倍、女性で2~3倍、肺がんになりやすいと言われています。煙草をやめたとしても、20年経たないと普通の人と同等のリスクに戻らないとも言われています。電子タバコや非燃焼・加熱式タバコも、呼吸器学会としては勧めていません。また肺がんに限らず、過度なアルコール摂取を控えること、バランスの取れた食事や適切な運動をすることも大切です。