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第8回 乳がんの知りたいこと、解説します!


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●テーマ/乳がんの知りたいこと、解説します!
●講師/石黒 清介 医師(一宮西病院 乳腺・内分泌外科部長)
●聞き手/江崎 あずみ(輝く女性のママ・サークル「チアフル・ママ」代表)

乳がんはどのような病気?

(江崎)
乳がんはどのような病気なのかを詳しく教えてください。
(石黒)
国立がん研究センターが公表している部位別のがん死亡者数データによると、2014年の乳がんの死亡者数は1万3240人です。一方、罹患者数を見ると女性は乳がんが圧倒的に多く、7万3997人です。つまり乳がんは、罹患率は高いですが死亡率は低い病気といえます。また、乳がんに罹患した日本人女性の10年生存率は79・3%。治療を開始して10年経った時点で8割の方が生存しているということです。では、乳がんで亡くなる2割の方はどういうケースかというと、初期の乳がんや非常に進行した乳がんなどさまざまです。
(江崎)
2012年のデータを拝見すると、日本人女性の乳がんの年齢別罹患数は、45歳から49歳にピークがありますね。
(石黒)
そうですね。そして一旦下がりますが65歳からまた上がり、どんどん下がっていきます。20代の罹患者はほとんどおらず、20歳~24歳の罹患者は全国60人ほどで、25~29歳でも200人ほどです。こうしたデータから、罹患者数が少ない20代に対して乳がん検診を行うことの有用性が問われ、過剰診療を指摘する意見も少なくありません。
(江崎)
ただ、若いタレントさんが乳がんで亡くなられたというニュースなどを見ると、若い方も気になってしまうと思います。実際、若い方が検診に来られることは多いのでしょうか。
(石黒)
30代の方も多いですし、20代の方のなかには、会社の指定で乳がん検査を受けに来られるという方もおられます。そうした状況に直面すると、まずは多くの方に乳がん検診について正しい知識を持っていただくことが大事だと実感します。

性質による乳がんの分類

(江崎)
乳がんはどこにできやすいのでしょうか。
(石黒)
多くの乳がんはお乳が通る乳管にできます。がんは最初のうちは乳管のなかにとどまっていて、この段階を「非浸潤がん」といいます。ある段階で外に出て「浸潤がん」になると、脂肪組織に入り込み、リンパ節や血管を通して肺や肝臓に転移していきます。非浸潤がんか、浸潤がんかは非常に重要で、非浸潤がんの場合は手術をすれば治癒します。
(江崎)
がんの進行度を判断するTNM分類という言葉を聞いたことがあります。
(石黒)
乳がんの場合、腫瘍径2㎝以下をT1とし、2㎝~5㎝までをT2、それ以上はT3、T4と表します。リンパ節に転移がなければN0(エヌゼロ)、遠隔転移がなければM0(エムゼロ)です。たとえば、腫瘍径2㎝以下でリンパ節転移がなければ病期は1期となります。非浸潤がんは0期ですね。昔はTNM分類だけでがんを分けていましたが、最近では適切な治療を行うために、がんがどのような性質を持っているかで分けるようになっています。エストロゲンという女性ホルモンの受容体や、ヒト上皮増殖因子受容体(HER2)を持っているかどうかです。必ずこの2つを検査し、陰性か陽性かを調べて4通りのタイプに分類して、ホルモン療法や薬物療法、化学療法など、どの治療法が適しているかを判断して治療を行います。

乳がんと遺伝の関係

(江崎)
がんの大きさなどだけでなく、タイプによって治療法が違ってくるということですね。では次に、乳がんのリスクに関する質問です。どんな人が乳がんになりやすいのでしょうか。
(石黒)
閉経前後を通して、授乳経験のある方は乳がんになりにくいといわれています。また、閉経後の肥満は乳がんのリスク要因といわれていますね。乳がんのリスクを減少させる食べ物などが話題になることがありますが、データが不十分ですので、信用のない話と思っていただいたほうがいいですね。いずれにせよ極端な偏食は健康のために良くありません。
(江崎)
次も気になる質問です。乳がんは遺伝するのでしょうか。
(石黒)
がんというのは、遺伝子が壊れて細胞の増殖の歯止めが効かなくなった状態をいいます。それが遺伝するかどうかというと、精子や卵子のなかでそういう異変が起きた場合には遺伝します。専門用語で生殖細胞系列変異といいますが、乳がんでよく知られているのがHBOC(遺伝性乳がん・卵巣がん症候群)です。この遺伝子異常があると、80歳までに乳がんになる確率が72%、卵巣がんになる確率が45%といわれています。遺伝子異常があるかどうかは血液検査で調べることができますが、保険適用外となります。検査をすることが本当にいいかどうかはデリケートな問題です。なかには知りたくないという方もいらっしゃるので、カウンセリングなどを含め慎重な対応が求められます。

マンモグラフィとエコー

(江崎)
続いて検査に関する質問です。マンモグラフィ検査を受ければ乳がんは見つかるのでしょうか。
(石黒)
マンモグラフィ検査では、乳がんは白く写ります。20代の方がマンモグラフィ検査をするとほとんど真っ白に写りますが、白い部分はすべて乳腺です。一方、年齢の高い方は乳腺がほとんどなく脂肪が多いので、乳がんの部分は白く写ります。ですから乳がんを見つけるには、全体に乳腺が多い方はエコー検査のほうが向いていますし、脂肪が多い方はマンモグラフィ検査が向いています。両方の検査を行えば、より検査の精度は上がります。また、精密検査のためにCT、MRI、PETを使う場合もありますし、必要に応じて細胞診や組織診などを行い、診断を確定します。

手術せずに治療は可能?

(江崎)
検査で乳がんを早期発見できれば、手術をしなくても治せるのでしょうか。
(石黒)
早期であれば手術だけでも治るがんもあります。小さくても薬が全く効かないがんもあります。まずはどういったタイプのがんであるのかを知るために、生検や手術は必要です。進行がんの場合、術前化学療法で小さくしておいてから温存手術をしたり、場合によっては薬だけで完全に消失することもあります。病期Ⅰ、Ⅱ期では手術をしてから、術後補助療法を行うのが一般的です。

受診や自己検診で早期発見

(江崎)
最後に、先生から皆さんに一番伝えたいことをお聞かせいただけますでしょうか。
(石黒)
まず、乳がんは早期発見すれば治癒する可能性が高く、それほど怖いがんではないということです。乳がんを検診で見つける方は40代では30%程度で、多くは自己検診で見つけられています。痛みがあって受診される方も多いですが、診断結果のほとんどは乳腺症です。まれに乳がんが見つかる方もいらっしゃいますが、痛みの症状が出ることはあまりありません。乳がんの検査に関しては、画像診断や病理診断には限界があるということをご理解ください。

通いやすい病院で治療を

(江崎)
ひとくちに乳がんといっても本当にさまざまなタイプがあり、そのタイプによって治癒度が違い、何よりも早期発見が大事だということがよくわかりました。私たちは自己診断などを行って気になることがあると、つい簡単にネットで調べてしまいがちですが、逆に不安が増してしまうかもしれません。そんなときは自分で調べずに、すぐに病院に行って診ていただくほうが安心ですね。
(石黒)
乳がんの治療をされる方に申し上げたいのは、できるだけお近くの病院で治療をしたほうがいいということです。手術は乳がんの治療の一部です。術後補助療法は化学療法だと3〜6ヶ月、ホルモン療法だと術後5年の通院が必要です。再発すれば何年も毎週のように通院が必要となります。できれば通院しやすいお近くの病院で治療したほうがよいと思います。一般的な補助療法であればガイドラインがでていますので、乳がんを専門に取り扱っている診療科のある病院であれば全国どこに行っても治療に大きな差はありません。