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思わぬ腹痛の原因・便秘


お腹が痛い!という訴えによって救急車で病院に運ばれる患者さまのおよそ50%が入院されます※1
入院になったうちの47%が手術を受ける※2といいますから、それほど“お腹の痛み”は軽いものではないといえます。
しかし、そういった中には“便秘”が原因となる方もいらっしゃるのです。

今朝もうんちは出ましたけど…

「今回のお腹の痛みの原因は便秘ですね」と説明をすると、「えぇ!? 今朝も便は出ましたけど…。便秘なんですか?」といわれることがあります。「レントゲンを撮ってみましょう」と撮影すると、腸の中が便だらけになっていることが目に見えてわかり、「うそ!」と驚く方も少なくありません。

便秘のレントゲン写真

便秘の定義

そもそも便秘の定義とは何なのでしょう。医師がよく使っている教科書の一つであるワシントンマニュアルには“便秘とは主観的なもので、便通困難感や排便回数の減少(週3回未満)を指す”と書かれています※3
主観的ということですから、自覚がない人は便秘ではないということになります。また、排便回数が減少していない人もまた、便秘ではないことになります。ところが、これに当てはまらない実例が実際には山程あります。

これを受けてか、2017年に改訂された慢性便秘症ガイドラインでは、便秘の定義が次のように変わりました。
本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態
この定義は画期的で、すでに便秘でお悩みの方や、自覚はしていなかったけどレントゲンで便秘があることが証明された方にとっては、ぴったりあてはまる定義となっています。

若い人の便秘の原因

特に若い人で便秘で悩んでいる方は、正しい便秘の原因を知っておきましょう。原因を正しく知らなければ、どれだけ努力しても便秘は治りません。

若い人の便秘の特徴は、
  • 硬くて小さい便
  • 排便反射を誘発するのに必要な直腸圧力が、通常よりも必要な便
といわれており、便の硬さや大きさと、排便に必要な筋力の問題が指摘されています※4
便が硬い人は水分の摂取不足ですし、排便に必要な筋肉とは骨盤底筋群や腹筋となります。水分をしっかり摂って、骨盤底筋群を鍛えます。骨盤底筋群を鍛えておくと、尿失禁を減らす効果もあります。

便秘の治療に有効なものとそうでないもの

Q. 食物繊維を多くとるほど便秘は改善する?

A. 便秘の改善と食物繊維の摂取量には相関はありません※5。むしろ食物繊維を摂りすぎると便秘が悪化することもあります※6


Q. 便秘にはエクササイズがよい?

A. 運動が便秘を改善するというエビデンスレベルの高い報告はまだありません※7。どの程度の運動が必要かもわかっていません。


Q. お腹をさするとよい?

A. 腹壁マッサージといって、お腹を「の」の字に1日15分、週5回マッサージすることが有効であるとわかっています※8


Q. ヨーグルトを食べるとよい?

A. プロバイオティクスと呼ばれていますが、便の腸内通過時間の短縮、排便回数が増加することがわかっています※9


Q. センナ(生薬)がよい?

A. 長期連用すると耐性が出現し、難治性便秘になります※10


便秘によいとされる食事

一般的に食物繊維(1日20~35g)に加えて、リンゴ、モモ、ナシ、サクランボ、レーズン、ブドウ、ナッツなどの食品がよいといわれています。
プルーンやオオバコも有名ですが、いずれにしてもそればかりを大量に摂取することは避けましょう。

出典
※1)Brewer BJ, Golden GT, Hitch DC, Rudolf LE, Wangensteen SL. Abdominal pain. An analysis of 1,000 consecutive cases in a University Hospital emergency room. Am J Surg. 1976 Feb;131(2):219-23.
※2)Irvin TT. Abdominal pain: a surgical audit of 1190 emergency admissions. Br J Surg. 1989 Nov;76(11):1121-5.
※3)The Washington Manual™ of Outpatient Internal Medicine
※4)Bannister JJ, Davison P, Timms JM, Gibbons C, Read NW. Effect of stool size and consistency on defecation. Gut 1987; 28: 1246‒50.
※5)Leung L, Riutta T, Kotecha J, Rosser W. Chronic constipation: an evidence-based review. J Am Board Fam Med. 2011 Jul-Aug;24(4):436-51.
※6)Müller-Lissner SA, Kamm MA, Scarpignato C, Wald A. Myths and misconceptions about chronic constipation. Am J Gastroenterol. 2005 Jan;100(1):232-42.
※7)Meshkinpour H, Selod S, Movahedi H, Nami N, James N, Wilson A. Effects of regular exercise in management of chronic idiopathic constipation. Dig Dis Sci 1998; 43: 2379‒83.
※8)Lämås K, Lindholm L, Stenlund H, Engström B, Jacobsson C. Effects of abdominal massage in management of constipation--a randomized controlled trial. Int J Nurs Stud. 2009 Jun;46(6):759-67.
※9)Miller LE, Ouwehand AC. Probiotic supplementation decreases intestinal transit time: meta-analysis of randomized controlled trials. World J Gastroenterol. 2013 Aug 7;19(29):4718-25.
※10)Bharucha AE, Pemberton JH, Locke GR 3rd. American Gastroenterological Association technical review on constipation. Gastroenterology. 2013 Jan;144(1):218-38.

コラム執筆

一宮西病院 総合救急部 救急科
部長
安藤 裕貴

2008年、富山大学卒業。富山大学附属病院・富山県厚生農業協同組合連合会高岡病院で初期研修後、福井大学医学部附属病院にて後期研修。福井市立敦賀病院、名古屋掖済会病院を経て、2018年より一宮西病院。

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※本ページに掲載されている情報は、2020年12月時点のものです。
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