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脳卒中


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脳の病気の多くの割合を占めるのが、血管の病気。
その血管が“詰まる”、あるいは“破れる”病気を総称して、脳卒中といいます。
ここでは、脳卒中の様々な症状や治療、原因や予防法までを解説します。


脳卒中とは

脳の血管障害、脳卒中

出典: 厚生労働省「人口動態統計(確定数)」(2022年)

出典: 厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年)

脳卒中(Stroke; Cerebral Apoplexy)とは、脳の動脈が詰まったり破れたりといった脳血管の障害により生じる病気の総称です。大きく分けると脳梗塞脳出血くも膜下出血の3つに分類され、これらは“脳卒中の三大疾病”と呼ばれています。脳卒中は日本人の死亡原因の第4位※1、介護が必要となる原因の第2位※2で、年間約30万人が新たに脳卒中を発症しています。

脳卒中はすばやい診断、すばやい治療が大事です。特に太い血管が詰まる重症の脳梗塞の場合だと、治療が3~4分遅れるごとに予後の良い患者さんが1%ずつ少なくなるといわれています。1分でも早く治療を開始することで、血流を再開通させるまでの時間をいかに短縮するかが大事です。
また、患者さんを見ただけでは疾病の見分けがつきにくいため、まずは早く診断をつけ、素早く治療につなげることが重要であり、そのためにはさまざまな連携が必要になります。

搬送前から多職種で連携

医療機関によってさまざまですが、患者さんと最初に接触する救急隊との緊密な連携も大切です。救急隊の情報から重症な脳卒中が疑われる場合は、患者さんが運ばれてくる前に病院の受け入れ態勢を整えることができるからです。
当院では医師だけでなく、看護師や放射線技師などの多職種でチームを組んで、1分でも早い治療の開始をめざしています。
脳血管が詰まる=脳梗塞

ラクナ梗塞
脳の深部にある細い血管が詰まることで発症。小さな範囲の梗塞で生命にかかわることはありませんが、錘体路とよばれる運動神経の通り道に発症することが多く、麻痺の程度が重くなることも多くあります。内服と点滴による治療が中心となります。

アテローム血栓性脳梗塞
比較的太い脳血管が動脈硬化によって狭くなり、そこに血栓ができて血管が詰まることで発症。比較的広範囲に脳梗塞が生じたり、発症後数日間は症状が不安定になることがあります。発症早期には血栓回収療法が適応となる場合があり、その後の再発予防は内服と点滴での治療となりますが、狭窄や閉塞している血管によっては、慢性期にバイパス手術やカテーテルによる血管形成術をおこなうこともあります。

心原性脳塞栓症
不整脈(心房細動)によって心臓にできた血栓が、脳血管に流れて詰まることで発症。広範囲の脳梗塞となることが多いのが特徴です。アテローム血栓性脳梗塞と同様、発症早期には血栓回収療法が適応となる場合があり、その後の再発予防は内服と点滴での治療となります。

脳血管が破れる

脳出血
細い脳血管がもろくなり、破れて出血します。

くも膜下出血
脳血管にできたコブ(脳動脈瘤)が破裂し、脳の表面にあるくも膜の内側に出血します。

脳梗塞

血管が詰まり、その先に血液が流れなくなることで脳細胞が壊死する病気を脳梗塞(Cerebral Infarction)といいます。脳梗塞の発症率は脳卒中のなかでも約7割※3を占めており、自然と収まることがある出血と違い、血流が止まってしまうために脳がどんどん壊死していきます。そのため、重症の場合1分間で約190万個もの神経細胞が壊死してしまい、再生は難しいといわれています。一刻も早く脳の血流を回復させることが、後遺症を少なくするために重要になるのです。

出典: 日本脳卒中データバンク「脳卒中レジストリを用いた我が国の脳卒中診療実態の把握」報告書(2023年)

原因は動脈硬化と心房細動

脳梗塞の原因は“動脈硬化”と、心臓の不整脈の一種である“心房細動”です。動脈硬化は高血圧、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病や喫煙など複合的な要因によるもので、長い時間をかけて血管が狭窄していきます。一方、心房細動は心臓の一部が正常に収縮できなくなる疾患ですが、それにより血流が滞り血栓が形成され、それが剥がれて脳に飛ぶことで脳梗塞を引き起こします。心房細動による脳梗塞は、広い範囲の脳梗塞を引き起こし重症化しやすいとされています。

救急車を呼ぶべき前兆の合言葉、FAST

脳梗塞の主な症状は痛みをともなわないことが多いため、脳の病気だと気づきにくく、治療が遅れるケースが多くあります。脳梗塞を強く疑うべき前兆や症状をまとめた標語、救急車を呼ぶサインとして“FAST(ファスト)”というものがあります。
FAST

顔のまひ

腕のまひ

うまく話せない

発症時刻

のまひ、のまひ、うまく話せないなどの異常を感じたら、
発症時刻を確認して迷わず救急車を呼ぶ
  • Face(顔)
    顔面の片側の口角だけが下がってしまう、よだれがどちらかの口角から垂れてしまうなど
  • Arm(腕)
    片側の腕だけ力が入らない・持ち上げられない(片麻痺)
  • Speech(言葉)
    しゃべれない、ろれつが回らないなど
  • Time(時間)
    脳卒中(特に脳梗塞)は“時間との戦い”のため、発症からの経過時間が重要

これらの症状があった場合は、なるべく早く救急車を呼んでください。

一時的な症状は、前兆の可能性も

脳梗塞の症状は数分~数時間で消えることがあります。これは一過性脳虚血発作(Transient Ischemic Attack; TIA)と呼ばれ、本格的な脳梗塞の前触れといわれています。場合によっては入院のうえ脳梗塞に準じた加療が必要となったり、頭蓋内血管や頸部の血管に狭窄があったり、不整脈が潜在している可能性が高いため、精査が必要となります。すぐに回復したからといって見過ごさず、すぐに医療機関を受診するようにしてください。

脳梗塞の治療

脳梗塞の治療においては、血管内に詰まった血栓を“溶かす”お薬の治療と、“取り除く”手術治療が主におこなわれます。

“溶かす”治療である血栓溶解療法(t-PA療法)では、t-PAという血栓溶解薬を使って血栓を溶かします。点滴から投与するため、細い血管が詰まった場合にも使用できますが、発症から4.5時間以内の使用という時間的な制約や、副作用の観点から投与できない場合もあります。また、そもそもこの薬だけでは血流の再開通が難しい場合もあります。
そういった場合は、カテーテルを用いて詰まっている血栓を取り除く、血栓回収療法という外科的治療をおこないます。

“取り除く”治療である血栓回収療法では、まず足の付け根(鼠径部)などからカテーテルと呼ばれる細い管を入れ、血管内を通して脳の血栓まで持っていきます。そこからステントレトリーバー(金属の網)の網目に血栓を絡めて、原因となる血栓を取り除いて血流を再開させます。治療に要する時間は平均3時間ほど、治療による傷が小さく術後の回復も早い低侵襲治療で、ほとんどの場合が局所麻酔での治療となります。
適応時間が発症から8時間以内※4と比較的長く、8時間を過ぎていても患者さんによっては適応となる場合があります。太い血管が詰まっている場合はほとんどが重症ですので、適応のある患者さんには積極的に血栓回収療法をおこないます。また、内科的治療では再開通が困難であった血栓も除去できる場合があるため、注目されている治療法といえます。

これらの治療法の中から、患者さんひとりひとりの状況を把握し、最適な方法を判断していきます。

ステントによる血栓回収療法

脳梗塞の原因となっている血栓を、カテーテルで物理的に“かき出す”治療です。主に発症から8時間以内で、太い血管に詰まった血栓に適応となります。この血栓回収療法により、今までなら手足のまひが残っていたような症例の方も、後遺症なく歩いて帰るというケースが増えてきています。

①足の付け根などの太い血管からカテーテルを挿入します。血管の中を通しながら、カテーテルの先端につけられたステント(金属の網)を患部の血栓まで運びます。

②カテーテルが血栓を貫通したことを確認し、血栓の中側からステントを広げます。網状のステントが拡張することで、血栓とステントを充分に密着させます。

③絡みついた血栓とともに、ステントを体外に回収します。

吸引ポンプによる血栓回収療法

吸引力の強いポンプに接続されたカテーテルで、掃除機のように血栓を吸引しながら回収する治療法。血栓の大きさや位置などによっては、ステントと吸引ポンプを併用することもあります。

頸動脈ステント留置術

脳梗塞を引き起こす“頸動脈狭窄症(脳に入る手前の頸部で血管が狭窄すること)”の治療法です。風船(バルーン)付きのカテーテルを用いて血管の狭窄部位を拡張し、そこにステントを留置し狭窄を防ぎます。

①足の付け根などの太い血管からカテーテルを挿入し、患部である首の血管まで進めていきます。

②バルーンを用いて細くなった血管を広げます。

③ステントを留置して、カテーテルを回収します。

脳出血

脳出血のCT画像

脳の中の細い血管が破れて、脳内で出血する病気を脳出血(Intracerebral Hemorrhage)といいます。脳の表面の比較的太い血管で起こるくも膜下出血と違って、脳出血は目に見えないくらいの細い血管で起こります。
出血の部位や大きさによって症状はさまざまですが、多くの場合は脳梗塞と同じように手足のまひや言語障害、ろれつが回らなくなったり、ふらふらして歩けなくなったりなどの症状が出ます。また、出血が起こった場所や大きさによっては、さまざまな後遺症が出ることも考えられます。

最大の危険因子、高血圧

脳出血の最大の危険因子は、“高血圧”です。高血圧は、それだけで血管にストレスをかけている状態で、動脈硬化の進行が早くなります。動脈硬化によって血管がもろくなってしまい、それが破綻するのです。また、過度な飲酒や喫煙も、血管のストレスとなることがわかっており、これらも脳卒中の危険因子です。

脳出血の治療

脳出血の場合、原則的には保存的治療(点滴、内服など)となりますが、血腫が大きく意識障害が進行する場合は、救命を目的に手術をおこなうことがあります。手術には、頭蓋骨をあけて顕微鏡下で血腫の除去をおこなう開頭血腫除去術や、頭蓋骨に約2cmの穴をあけて内視鏡下で血腫を吸引する内視鏡下血腫除去術などがあり、患者さんの状態に応じて術式を選択します。

また生命にはかかわらないものの、比較的血腫が大きい場合は、早期の離床を目的に発症から数日後に定位血腫除去術をおこなうことがあります。特殊な金属性のフレームを装着して頭蓋骨に約1.5cmの穴をあけて、そこから血腫まで針をすすめて吸引します。

脳出血に対して後遺症をなくすような治療はいまだになく、一度発症すると損傷した脳は回復しませんので、予防(日常の血圧管理)が重要になります。

くも膜下出血

くも膜下出血のCT画像

脳の表面の比較的太い血管が破れて、脳の表面の膜・くも膜の下に出血する病気をくも膜下出血(Subarachnoid Hemorrhage)といいます。脳卒中の中でも死亡率が非常に高いもので、統計的にはくも膜下出血を発症した患者さんのうち、約1/3の方が亡くなられています。社会復帰できるくらい元気になられる方も1/3くらい、残りの1/3の方は後遺症で寝たきりなどになっています。

特徴は突発する激しい頭痛で、ハンマーで殴られたようにその瞬間で一気に痛くなる頭痛がくも膜下出血の典型的な症状です。多くの場合、脳動脈瘤の破裂が原因となり、血管の一部が水風船のようにぷくっと膨らんでしまったもの=“動脈瘤”が突然破裂して発症します。

くも膜下出血は、加齢とともに発症率が増加しますが、脳出血と比べると若年でも発症するのが特徴です。また日本人は諸外国と比べ、発症率が高いことも知られています。

未破裂動脈瘤

動脈瘤があるかどうかは、脳ドックなどであらかじめ調べることができます。破裂する前に発見された動脈瘤を未破裂動脈瘤といい、未破裂動脈瘤が見つかった場合は、コブが破裂するリスクに応じて、治療の適応があるかどうかも含めてよく検討することが大切になります。

未破裂動脈瘤がある=“将来くも膜下出血を発症する危険性がある”ということですが、必ずしもすべての方がくも膜下出血を発症するわけではありません。動脈瘤はその大きさ、できた場所、形のいびつさによって危険性・発症率に違いがあるといわれており、これらはMRI検査だけでは判断できない場合もあるため、そういった際にはより詳しい検査を別途おこないます。

また、脳動脈瘤の発生頻度は一般成人で2~4%程度ですが、一親等の血縁者がくも膜下出血を呈した場合には4~7倍になります。未破裂動脈瘤といっても、患者さんひとりひとりで状況は異なるため、脳神経外科を受診し、よく相談されることが大切です。

くも膜下出血の治療

くも膜下出血はたいていの場合、病院に運ばれたときには出血は自然に止まっています。ただ、かさぶたのような状態でかろうじて穴がふさがっているだけで、いつ再破裂するかわからない危険な状態です。そのため、くも膜下出血に対しては、“再出血の予防”を目的とした治療を第一におこないます。

クリッピング術

くも膜下出血の治療として、開頭しておこなうクリッピング術というものがあります。これは頭蓋骨を開けて、動脈瘤の根元に金属のクリップをかけ、コブに血液が入り込まないようにする治療法です。

コイル塞栓術

最近では頭を開けずにおこなう、コイル塞栓術といった治療法もあります。足の付け根(鼠径部)の血管から入れたカテーテルを頭の中の動脈瘤まで持っていき、そこからコブの中にコイルを詰め、血液が入り込まないようにするものです。
また、血管内治療の技術は日進月歩で、毎年のように新しい治療デバイスが開発され、治療成績も向上しています。以前は治療困難だった脳動脈瘤も、現在では治療可能となっている場合もあります。
近年ではWEBと呼ばれる袋状の塞栓デバイスや、フローダイバーターと呼ばれるステント型の治療デバイスが開発され、注目されています。

WEB(SL型)

①ワイドネック分岐部脳動脈瘤

②脳動脈瘤内にWEBを留置

WEB(Woven EndoBridgeデバイス)とは、球状または円筒状のメッシュ構造の塞栓デバイスで、ワイドネック分岐部脳動脈瘤に対して適応となります(一部施設でのみ実施可能な治療ですが、当院では実施可能)。ワイドネック分岐部脳動脈瘤とは、動脈瘤の入口部分(ネック)が広く、血管の分岐する部分にできるものです。入口の大きな分岐部の動脈瘤コイル塞栓術をおこなうと、詰め込んだコイルが動脈瘤をはみ出して、正常な血管を塞いでしまうリスクがあるなど、これまでは治療が難しいとされていました。
カテーテルを通じて、動脈瘤の中へWEBを押し出すと拡張。動脈瘤の入口部分を覆うようにWEBを置くことで、動脈瘤の中に血液が入り込まないようにします。これによって動脈瘤内の血液が淀んでゆっくりと血栓化し、入口部分が閉塞されるため、一度閉塞された場合は再発するリスクが低いといわれています。
また、動脈瘤以外の正常な血管にステントを留置しないために血栓症が起こりにくく、治療後には血栓症を防ぐための内服も必要ありません

フローダイバーター(Flow Diverter)治療とは、これまでコイル塞栓術では血液を遮断することが難しかった大きな脳動脈瘤に対しても適応可能な治療法です(WEBと同様、一部施設でのみ実施可能な治療ですが、当院では実施可能)。
フローダイバーターステントは、通常のステントと比べて網目が細かくなっており、カテーテルを通じて動脈瘤の入口部分(ネック)を覆うようにステントを置くことで、動脈瘤の中に血液が入り込まないようにします。WEBと同様、動脈瘤内の血液が血栓化し、入口部分が閉塞された場合は再発するリスクが低いといわれています。
動脈瘤に直接触れないため、血管を傷つけることがなく、動脈瘤の中に金属を入れることもないため、手術中に動脈瘤が破裂するリスクを抑えることができます。ただし、血栓化が起こらない可能性があることや、適応について脳動脈瘤の位置や大きさ、形状などに規定があるため、すべての症例に有効というものではありません。
動脈瘤の形や場所によってどういった治療が最適かが変わってくるため、都度判断して治療法を選択します。
また、血管の破裂が起こる前の未破裂動脈瘤に対する治療も同様に、頭を開ける“クリッピング術”か、カテーテルを使った“コイル塞栓術”を実施することになります。

脳ドック

事前に脳卒中の兆候を見つけることはとても大事です。脳ドックは多くの場合、まずMRIで頭の断層写真を撮ります。MRIでは、本人も気づかないような症状が出ないくらい小さな脳梗塞脳出血をチェックすることができます。
また、MRAという検査では血管の写真を撮ります。くも膜下出血の原因になるような脳動脈瘤や、血管が細くなって詰まりそうになっていないかなどをチェックすることができます。

脳ドックの受診では、すべての脳卒中の兆候がわかるわけではありません。ただ、くも膜下出血の原因になる動脈瘤の有無や、重大な脳梗塞の原因になるような血管の狭窄・閉塞を見つけることができます。一度受診して異常がないということであれば、2~3年に一度のペースで受診いただければ良いと思います。異常が見つかった場合は、結果次第で定期的に受診をしてください。

また、異常がない方であっても、日ごろから血圧には気を遣ってください。血圧が高いと脳卒中になりやすいといわれていますので、高血圧の方は早めに受診し、生活習慣も含めて適切に対処することが重要です。

脳卒中を予防するには


脳卒中予防十か条
  1. 手始めに 高血圧から 治しましょう
  2. 糖尿病 放っておいたら 悔い残る
  3. 不整脈 見つかり次第 すぐ受診
  4. 予防には たばこを止める 意志を持て
  5. アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
  6. 高すぎる コレステロールも 見逃すな
  7. お食事の 塩分・脂肪 控えめに
  8. 体力に 合った運動 続けよう
  9. 万病の 引き金になる 太りすぎ
  10. 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ
公益社団法人日本脳卒中協会
脳卒中予防十か条

脳の血管が動脈硬化を起こしてしまうと、脳卒中の発症リスクが上がります。この動脈硬化の原因として、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、肥満、喫煙などが挙げられますが、これらは本人では気がつきにくいので注意が必要です。

そして、特に気をつけなくてはいけないのが血圧で、高血圧が血管病の一番のリスクになることは明らかです。1日の中で血圧が高くなる朝や夕方に発症しやすいことからも、血圧管理の重要性がわかります。また、高血圧の方はそうでない方と比べて発症のリスクが約3倍以上といわれており、高血圧治療により血圧を10mmHg低下させることで、脳卒中の発症リスクが41%低下するとも報告されています。

一番大事なのは血圧の管理ですが、動脈硬化を引き起こす生活習慣病の管理、たとえば運動と食事も非常も大切です。散歩をするだけでも発症のリスクが下がるといわれていますし、食事は減塩食が良いでしょう。
あらゆる病気の予防にいえることですが、生活習慣改善のため、日ごろから健康的な生活を心がけることが大事なのです。

寒い時期は要注意?

脳卒中は冬に起こりやすいというイメージがあるかもしれませんが、すべての脳卒中が当てはまるわけではありません。
冬に起こりやすいのは、脳出血くも膜下出血です。寒い時期は血圧が高くなりやすく、血管に負担がかかることで血管が破れることが多くなると考えられています。

脳梗塞に季節性はない

一方、脳梗塞にはあまり季節性はないといわれていますが、冬よりもむしろ夏場の脱水に注意が必要です。脱水で血液がドロドロになることで、脳梗塞のリスクが高まるといわれています。
水分をしっかりこまめにとることなどを意識して、汗をかいたらこまめに水分を摂るようにしましょう。

まとめ

脳卒中を発症すると、亡くならなくても寝たきりになってしまう方がまだまだ多い病気です。そうならないためにも、まずは脳卒中に“ならないこと”=予防が一番大切です。また、発症した後であっても治療が早ければ寝たきりになることを防げる場合があります。兆候に注意して、何かあればすぐに病院を受診することが大切です。

出典
※1)厚生労働省「人口動態統計(確定数)」(2022年)
※2)厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年)
※3)日本脳卒中データバンク「脳卒中レジストリを用いた我が国の脳卒中診療実態の把握」報告書(2023年)
※4)日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕」

コラム監修

一宮西病院
脳神経外科副部長 / 脳卒中センター長
伊藤 圭佑

2006年、金沢大学卒業。筑波大学附属病院で初期研修後、川崎幸病院で後期研修。その後、国立病院機構横浜医療センター、誠馨会新東京病院を経て、2016年より一宮西病院。

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※本ページに掲載されている情報は、2024年6月時点のものです。