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医師『糖尿病における療養支援の重要性』~食事と運動2刀流~



※本記事は、内科統括部長 森医師 監修、各コラムは3名の医師にそれぞれご提供いただいたものです。

1.糖尿病の現況

糖尿病の現状をお伝えします。2016年/2017年の国民健康・栄養調査では、2016年時点で糖尿病人口はおよそ1000万人にのぼっており、「糖尿病が強く疑われる者(20歳以上)」の割合、成人男性の約20%、成人女性の約10%が糖尿病とされています。

2016年国民健康・栄養調査,2017年

成人男性の約20%、成人女性の約10%が糖尿病

入院、通院される患者さんの数も増えています。2017年厚生労働省による患者調査でも図のように上昇の推移がみられます。加齢とともに糖尿病は増加、進行します。「糖尿病が強く疑われる者」の割合についても図のように男女ともに増加傾向にあります。

2017年患者調査(厚生労働省)

メタボリックシンドロームの割合は、加齢とともに多くなる

<平成19年国民健康・栄養調査>での20歳以上のメタボリック症候群とその予備軍の割合を示しました。年齢とともに増加しており,特に高齢者層でその割合が高いです。メタボリック症候群では内臓脂肪が多くなり,インスリンの効きを悪くします。

高齢になると糖尿病になりやすい理由

加齢によるインスリン分泌の低下(=臓器の低下)が起こりますが、必要時は薬の力を借りるようにしましょう。
適切な食事」・「運動療法」で、インスリン抵抗性増加でき、改善が期待できます。下記3点をポイントに頑張りましょう。

・日常の活動量低下
・筋肉量の低下
・メタボの割合増加



肥満者(BMI25以上)の割合の年次推移(20歳以上)

一般人口においても加齢とともに肥満度は増加

20歳から5kg以上増加すると糖尿病発症リスク増加

5kg以上増えた方は要注意です

糖尿病患者さんのBMI(肥満度)は上昇傾向

肥満が重なると、様々な病気を引き起こし、死亡リスクをあげます

まとめ

・日本の糖尿病患者数は増加傾向
加齢とともに糖尿病になりやすく、高齢者人口増加が 『糖尿病患者数増加』 の主な原因です。
・加齢で糖尿病になりやすくなる理由として、『活動量低下』 『筋肉量低下』『肥満の割合増加』 が挙げられます。
・一般人口でも肥満者の割合は増加傾向で、軽度の体重増加でも糖尿病発症リスクになります。
・糖尿病患者さんの肥満度も増加傾向です。
『適切な食事』『運動』で糖尿病発症予防、糖尿病患者さんの肥満解消が期待できます。

2.糖尿病療養支援

国語辞典には【療養:医学的な知識を用いて疾病や傷を治療しながら休養すること】と記載してあります。

糖尿病は現時点では完治しない慢性疾患なので、ずっと休養するわけにはいきません。治療しながら健康な人と変わらない日常生活を送ることが糖尿病における療養の目的で、それを支援するのが『療養支援』です。
患者さんの生活にアプローチし、患者さん自身が、療養における課題に 目を向け、その課題に取り組むこと(=自己管理による療養)ができるように支援することが私たちの役割になります。

(日本糖尿病教育・看護学会誌 Vol. 25 No. 2, 2021 (1)一部改変)

糖尿病療養支援の効果

  • HbA1cが改善
  • 体重が低下
  • 低血糖リスクを長期にわたり抑制
  • 2型糖尿病患者の総死亡リスクを26%抑制
  • 糖尿病関連の入院頻度を抑制
  • 不安や抑うつ、糖尿病関連QOL(生活の質)に有効


糖尿病診療ガイドライン2019より抜粋

療養の治療効果に占める割合は治療薬と同等

療養をおろそかにするとどうなるか

例1)食事療法をしなかった場合
→血糖値が下がらない。薬が増えた。体重が増えた。他の病気(血圧、脂質、尿酸、脂肪肝など)が出てきた。

例2)運動をしなかった
→血糖値が下がらない。筋肉が落ちて寝たきりに。心肺機能低下してきた。

例3)シックデイ(病気の日)対応がわからない
→インフルエンザであまり食べられなかったから、インスリン注射や内服薬を全て中止ししたら、具合がわるくなり救急車で運ばれた。


どんなことを学ぶの?

・食事療法
・運動療法
・薬物療法:服薬や注射のタイミング、副作用と対応
・低血糖対応:低血糖時の対応,低血糖予防のための注意点
・血糖測定:血糖測定器の有効な使い方
・注射手技:インスリンなどの注射製剤の適切な使用用法
・シックデイ(病気)対応
・災害時対応:薬の予備はどのくらい必要か.避難生活での注意点
・糖尿病の合併症知識:眼科受診、腎症の早期の確認、フットケア
など

・・・など多岐にわたり、また個々によって必要な知識は異なります。

当院における療養支援実施者

【多職種からなるチーム医療】
・医師
・管理栄養士
・専門看護師
・理学療法士
・薬剤師

療養支援方法

■個別指導
・栄養指導(管理栄養士)
・運動指導(理学療法士)
・在宅療養指導(専任看護師)
・フットケア(専任看護師)
・教育入院(多職種による指導)

■集団指導
・糖尿病教室(※)
・料理教室(※)
・糖尿病週間

※集団指導はコロナ禍のため現在は実施していません。

世界糖尿病デーとは

 世界糖尿病デーは、糖尿病の脅威が世界的に拡大しているのを受け、世界規模で糖尿病に対する注意を喚起しようと、IDFと世界保健機関(WHO)によって1991年に開始され、2006年には国連の公式の日になりました。
 11月14日は、1922年にチャールズ ベストとともにインスリンを発見したフレデリック バンティングの誕生日にあたります。インスリンの発見により、糖尿病治療は飛躍的な進歩をとげた。 世界糖尿病デーのシンボルである「ブルーサークル」は、世界的に増加を続ける糖尿病に対する認知を拡大し、一致団結して対策を進める必要性を呼び掛けるために掲げられています。

3.今年の糖尿病週間のテーマと実践方法のコツ

当院の今年のテーマは「食事と運動の2刀流」です。

世界糖尿病デーの様子

■食事・運動療法の基本的な位置づけ
・食事療法
2型糖尿病の発症予防、血糖コントロール改善、肥満のある場合はその解消し種々の病態を是正につながります。

・運動療法
筋肉内に糖を取り込むことやインスリンの働きを高めることで血糖コントロール改善、肥満防止につながります。その他、転倒予防、心肺機能向上、サルコペニア予防、ストレス解消など様々な効果あり食事と運動両方を行うことでより効果が得られます。食事運動療法は糖尿病治療の基本で不可欠です。

食事運動療法を長く続けるコツ
・無理しない目標設定
・スモールステップで
・周りに宣言
・楽しみながら
・誰かと一緒に
・他人や周りとは比較しない
・自分をほめる


一宮西病院内分泌・糖尿病内科

食事運動療法に悩んでいる方、反応しない練習はいかが?

欲求や悩みに対して戦おうとするのではなく、反応しないようにすることを練習する本です。ご存じ仏教の開祖であるブッダの思考方法とのことですが、宗教じみていません。この考え方は食事運動療法で悩んでいる場合にも使えます。つまり、「食べたい」「休みたい」という欲求に反応しないようにすることで食事運動療法継続させることです。

『反応しない練習』 (著者) 草薙龍瞬 出典・引用・一部改変

反応しないための方法① ~心の反応であることを理解する~

①食事を必要量食べた後でもつい何か甘いものを食べたいと思ったら、それは「心の反応」の結果であることを理解する、それだけで欲求が治まっていきます。

<理解の手順>
言葉で確認:「私は何か甘いものを食べたいと思っている」と口に出して言ってみましょう。
感覚を意識:目を閉じて、深呼吸や手を握ったりして感覚を意識することで、反応が治まり、ムダな反応だったと理解します。(=マインドフルネス)
分類する:これはカテゴリーの中の貪欲の結果であり、「求めすぎ」によるものです。
反応しないための方法② ~自己否定しない~

②自己否定をしない
自己否定してしまうと、逃避や依存、承認欲求増加や他者の否定や攻撃につながることもあり、悩みを増やすことになります。

<自己否定防止方法>
「私は私を肯定する」と何度もつぶやきましょう。
一歩一歩、外を歩き自分の感覚に集中(マインドフルネス)
広い世界を見渡す:違う世界を知ることで思い込みを解消する

例)もし、甘いものを食べてしまったとしても、そのことに反応せず(自己否定せず)すぐに最初のやり方に戻り、やり直ししましょう。何度でも戻ることです。

『反応しない練習』 (著者) 草薙龍瞬 出典・引用・一部改変

一宮西病院 内分泌・糖尿病内科 伏見 宣俊

4.食事療法 総論

食事療法とは

■総摂取エネルギーの適正化、栄養素バランスを整え、 代謝の需要と供給を是正する。
■血糖値改善、合併症予防に効果的な治療法。
■食事療法だけで病状の改善が得られる糖尿病のケースもある。
■運動療法と適切に組み合わせる事で、効果は高い。

糖尿病で食事療法を行う目的は?

食事療法をおこなうことで、血糖値や糖尿病合併症を良好な状態に保ち、糖尿病の無い人と変わらない生活を送ることです。

食の多様化って?

日本人の食習慣は、就業形態、家族形態、欠食習慣、栄養状態、食の欧米化、社会的格差など様々な要因を背景として多様化しています。

個々の血糖状況、糖尿病合併症、多様化している食習慣。
それこそ多種多様なのに、個々のケースに合った食事療法をするって。
そんなこと可能なのか?



栄養指導も多様化
可能です。
食事療法は発症早期より実施し、その回数を増やす事で、より効果的に高血糖の改善をもたらす事が示されています。
チーム医療の要として、糖尿病療養指導に精通している管理栄養士と、患者さんを含めた糖尿病チームがひとつとなり、就業形態・家族構成・食事習慣パターンなど個々の条件に合わせた最適な食事療法を実践していく事が、良好な糖尿病病態を維持するために有益です。

低糖質食ってどうなの?

低糖質食ってどうなの?いいの?よくないの?
炭水化物ダイエットってどうなの? 痩せるの? 糖尿病にいいの?

糖尿病患者の栄養食事指導に関するコンセンサスステートメント
「糖尿病の予防・管理のための望ましいエネルギー産生栄養素摂取比率について、これを設定する明確なエビデンスは無いため、身体活動量、併発症の状態、年齢、嗜好性などに応じて個別化をはかり、適宜柔軟に対処する必要がある」 雑誌 糖尿病 63巻3号(2020)

炭水化物
炭水化物=糖質+食物繊維
■食物線維は糖尿病の有無に関わらず摂取励行。目標20g/日
■それを含め、炭水化物(糖質+食物繊維)は総エネルギー摂取量の50~60%の個別設定を勧められています。

糖質は主要なエネルギー源である
消費エネルギーを糖質でまかなえない場合は、脂質や蛋白質からエネルギー源を捻出する事になります。
ですが、脳・神経組織・赤血球ブドウ糖しか利用できないため、糖質が足りないと、脳・神経組織・赤血球は機能低下をきたします。
これらの必要糖質量は、最低でもブドウ糖100g/日と言われています。(※ブドウ糖=炭水化物の分解産物)

低糖質食のいい面、悪い面

■良い面
総摂取エネルギー量が多い肥満例には効果があります。体重減量や食後血糖低下の効果。(あくまでも短期的のデータ。長期的データとしての、全死亡率や動脈硬化疾患は逆。)

■悪い面
低炭水化物食では、相対的に高脂肪食となりがちで、血清脂質の増加から動脈硬化を促進します。(上記長期的データ。)
低血糖リスクも指摘されています。低血糖発作から、脳障害の認知機能低下、心血管疾患、心不整脈疾患、交通事故も増える事が報告されています。

DIRECT研究(2018年)低炭水化物食・低脂肪食・地中海食の3群で体重減量効果を比較!

短期間ならば、低炭水化物食地中海食の体重減量効果は低脂肪食より優位であった。
長期的には、優位差は認められなかった。
炭水化物を減らして、脂質や蛋白質を代替エネルギーとした場合脂質や蛋白質の内容によって、糖尿病発症率心血管イベントなどの総死亡率が変化する。(炭水化物代替エネルギーが動物性脂質・蛋白質の場合は上昇、炭水化物代替エネルギーが植物性脂質・蛋白質の場合は低下。)


つまり炭水化物ダイエットは?

低糖質食は、短期的には有効な可能性があるが、長期的には安全性や有効性に不明な点が多い
■海外の研究データではあるが、 総エネルギー摂取率が、40%未満(低炭水化物食)70%以上(高炭水化物食)の群死亡率が上昇していたとの報告もある。

かかりつけ主治医など糖尿病チームへご気軽にご相談ください

低糖質食をおこなうにしても、適応が厳選され、適切な指導がなされないと、危険な可能性があります。糖尿病薬の中には、低糖質食をおこなう事で致命的な病態へ進展する可能性があるものもあります。かかりつけ主治医など糖尿病チームへご気軽にご相談ください。
一宮西病院 内分泌・糖尿病内科 蜂谷 紘基

5.糖尿病治療 運動編

運動の効能

1. 血糖低下(ブドウ糖利用促進)
2. インスリン抵抗性改善(インスリン効きやすくなる)
3. シェイプアップ
4. 骨粗鬆症予防
5.高血圧や脂質異常症改善
6.心肺機能アップ
7.爽快感、気分向上
  →良い事しかありません!!
日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド2020-2021

運動前後のインスリン量と血糖

運動後はインスリン抵抗性改善し,少ないインスリン量で血糖値が保たれています。
(※図…Björntorp, P. et al.:Physical training in obesity Ⅱ,Effects on plasma insulin in glucose intolerant subjects without marked hyperinsulinemia. Scand. J. Clin. Lab.Invest,32:41, 1973より抜粋)

運動前後のインスリン量と血糖


運動の種類

■有酸素運動
10分以上持続・反復できる運動
 例)ウォーキング、サイクリングなど

■無酸素運動
持続・反復が難しい運動
 例)筋力トレーニング、短距離走など

運動の頻度

■有酸素運動
週3〜5日、合計150分程度。

■無酸素運動
週2〜3日、間隔をあけて。

運動療法を禁止あるいは制限した方が良い方

1.血糖値が極端に悪い(空腹時血糖250以上)
2.増殖前網膜症以上
3.腎不全
4.虚血性心疾患や心肺機能に障害がある
5.急性感染症
6.糖尿病性壊疽
7.高度の糖尿病性自律神経障害
 →不安な方はかかりつけ医に相談下さい!!
日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド2020-2021


そんな時間ないよ〜と思った方
『朗報』です。
最も簡単にできる運動があります。
それは・・・
『多動』です!
”多動”とは、身体を活発に動かすこと。”多動”は健康づくりに欠かせません。あまり無理な目標を立てて達成できないより、日常生活の中で身体活動量を増やしましょう。「2本の足は2人の医者」という格言があります。今より10分多く歩くことから始めましょう!
(一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 全国生活習慣病予防月刊スローガン2020 より抜粋)


さぁ、今から始めよう!

テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。テキストが入ります。
一宮西病院 内分泌・糖尿病内科 岩阪 達也
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
森 昭裕 医師監修
コラム提供 内分泌・糖尿病内科部長 伏見 宣俊,医師 蜂谷 紘基,医師 岩阪 達也

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