股関節痛でお悩みの方必見! 股関節痛の原因や治療に関する3つの疑問

両側同時の人工股関節置換術は、
体に負担の少ない方法であれば、1週間以内の退院が可能です。
体に負担の少ない方法であれば、1週間以内の退院が可能です。
40~50代になると股関節が痛くなる方が増えてきますが、その多くは変形性股関節症によるものだといわれています。進行すると靴下の着脱や爪切りが難しくなったり、長時間の歩行が辛くなったり、痛む方の脚が少しずつ短くなって歩き方も悪くなります。また、股関節をかばうせいで腰や膝が痛くなることもあります。ひどくなると夜間も痛みで眠りにくくなり、生活の質が落ちてしまいます。今回は一宮西病院 整形外科 股関節センター長である中北吉厚医師に、股関節痛についてお話をお伺いしました。
※本ページに掲載されている情報は、2023年1月時点のものです。
プロフィール
一宮西病院
整形外科 股関節センター長
中北 吉厚
2009年、名古屋市立大学卒業。中濃厚生病院、船橋整形外科病院、オーストリア・インスブルック大学への臨床留学を経て、2022年より一宮西病院。
⇒プロフィールの詳細はこちら
整形外科 股関節センター長
中北 吉厚
2009年、名古屋市立大学卒業。中濃厚生病院、船橋整形外科病院、オーストリア・インスブルック大学への臨床留学を経て、2022年より一宮西病院。
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1. 股関節痛の原因は?
股関節が痛くなる主な原因を3つご説明いたします。
寛骨臼(臼蓋)形成不全症

股関節は、大腿骨の骨頭とそれを覆う寛骨臼によって形成されますが、屋根となる寛骨臼の被覆が少ないことにより、骨頭の納まりが悪い(求心位が保てない)方がいらっしゃいます(図1・図2)。欧米に比べ日本人に多く、特に女性に圧倒的に多いのが特徴です。先天的な要因が大きく、若くて元気な間は股関節周囲の筋力でカバーしているので痛みはありませんが、加齢とともに体重の増加や筋力の低下に伴って股関節にかかる負担が増えて、関節唇や関節軟骨が傷ついて痛みが生じます。
大腿骨寛骨臼インピンジメント
寛骨臼側、大腿骨側の形態異常があり、股関節運動時にそれが繰り返しインピンジメント(衝突)することで関節唇や関節軟骨が傷ついて痛みが生じます。骨の形態異常は成長期に発生しやすく、スポーツ選手に多く認めます。
大腿骨頭壊死症
大腿骨頭へ血液が流れなくなり、骨壊死が生じます。外傷・骨折などの原因が明らかな症候性大腿骨頭壊死と、そうでない特発性大腿骨頭壊死に分類されます。後者はステロイド薬の治療歴や習慣性飲酒のある方に多く認めます。股関節は体重を支えているため、壊死した大腿骨頭は圧壊して(潰れて)、痛みが生じます。
いずれの場合も進行するとクッションの役割である関節軟骨がなくなり、骨の変形が生じて変形性股関節症となります。変形性股関節症も時間経過とともに進行し、痛みと可動域の制限が悪化していきます。
いずれの場合も進行するとクッションの役割である関節軟骨がなくなり、骨の変形が生じて変形性股関節症となります。変形性股関節症も時間経過とともに進行し、痛みと可動域の制限が悪化していきます。
2. 股関節痛の保存療法は?
40代~50代の女性に多く発症する変形性股関節症ですが、日本人においては、その多くは生まれつき股関節を形成する骨が不安定な状態にあることが原因です。ご自身の努力で大人の骨の形態を変えることはできませんから、少しでも進行を遅らせることが重要です。
食事・運動療法
股関節にかかる負荷を減らすことが大切で、肥満傾向の方は減量が何よりも重要です。ダイエットと聞くと運動を思い浮かべる方が多いですが、運動より食事療法が優先です。運動の中で良いのは、水中ウォーキングなどの股関節に荷重のかからない状態で体幹や股関節周囲を継続的に鍛えることです。適切な筋力と全身の柔軟性や運動連鎖を獲得することが大切です。
再生医療
ご自身の血液を採取して遠心分離をおこない、炎症を抑えるタンパク質や組織の修復を促す成長因子を多く含んだものを取り出し、股関節に注射します。保険適応がないため、受けられる施設が限られ、治療費が高額になることと、進行した変形性股関節症には効果が乏しいという課題があります。
3. 股関節痛の手術療法は?
保存療法で改善がなければ手術の適応となります。大きく分けて3種類の手術があります。
骨切り術
股関節の骨を切って、向きを変えたり回転させたりすることで荷重部の負担を減らし、安定した股関節を形成する手術です。主に若年者に検討され、骨頭を温存できる利点があります。ただし、入院期間が長く社会復帰が遅れること、また将来的に人工関節への再手術をおこなう場合に困難が伴う場合があります。
鏡視下手術
小切開で股関節に内視鏡を入れて、傷ついた組織を修復し、骨の一部を削る手術です。主に大腿骨寛骨臼インピンジメントのスポーツ選手やバレエダンサーなど、この手術が必要になる場合があります。手術によって股関節の不安定性を悪化させてしまうことがあるため、適応には注意が必要です。
人工股関節置換術

人工関節置換術のオペ風景

両側の変形性股関節症 術後の写真
上記手術で治療困難な変形性股関節症に対しておこなわれます。大腿骨の骨頭を抜去して、悪い部分を削り人工関節に置き換えます。患者満足度の高い手術であり、長期成績が向上して適応年齢が広がっています。全国で広くおこなわれていますが、手術方法やインプラントの種類は多種多様で、病院や医師によって異なります。負担の少ない方法でおこなえば、多くの場合は両側同時の手術であっても1週以内の自宅退院が可能です。
股関節の痛みで悩んでいる方へメッセージ
術後の回復が早い低侵襲な人工股関節置換術を得意としておりますが、手術を無理にすすめるようなことはいたしません。痛みの原因や経過、今後の人生に期待することは人それぞれ異なりますから、治療の選択肢や、それぞれの利点・欠点について、分かりやすくご説明いたします。

