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学校へ行けない…子どものメンタルヘルス 不登校に関する5つのこと


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精神心療科医長
市橋 佳世子
( いちはし かよこ )
主な資格/精神保健指定医、コンサータ錠登録医(コンサータ錠適正流通管理委員会)、日本精神神経学会 専門医・指導医

「なぜ不登校になってしまったんだろう…」不登校になってしまったお子さんを前に、こう考える方は多いはずです。ですが、不登校になってしまう原因は様々です。不登校への向き合い方、治療法について市橋先生が解説します。

1.「不登校」とはそもそもどんなものですか?

年度間で30日以上、病気や家の経済的理由以外で学校を休んでいる状態を不登校といいます。平成30年の日本全国の調査によると、何らかの理由で学校を休んでいるお子さんの割合は小学生で全体の1.3%、中学生は4.8%と中学生が多く、さらに年々増加しています。このうち不登校は小学生で0.7%、中学生は3.6%と不登校で悩んでいるお子さんはとても多く、中学校の長期欠席者の中では、4人のうち3人が不登校だと考えられます。愛知県は全国平均の不登校率を上回っており、その中でも一宮市はさらに不登校率が高い状況です。

2.「不登校」のお子さんにあらわれる症状はありますか?

お子さんにとって“学校に行きたくない、行けない”ということを言葉で伝えるのはなかなか難しいことです。初期症状は身体の不調という症状として出る場合も多く見られます。頭痛、吐き気、腹痛でトイレにこもって出られない、登校前夜に眠れないなど訴えはさまざまです。また、布団を被ったまま泣いてしまい布団から出られない、一旦家を出たのにまた家に戻ってしまう、玄関で立ちすくんだまま動けなくなるなどいろいろな状態で苦しんでいるお子さんの話を聞きます。「学校へ行きたくないんだ」と話すことができるお子さんは少なく、ただただ泣きながら「学校へ行きたいけど行けない」などと訴え自分でもなぜこうなってしまったのか理由が分からなくて困っているお子さんも多いです。頭痛や腹痛などの初期症状だけでは学校へ行きたくない、行けないと知らない間に感じているお子さんの心の変化に気づきにくいかもしれません。不登校が増えるのはゴールデンウィークや夏休みなどの長期休暇明けや、進級しクラスが変わった、学級委員になった時などの環境変化の影響も考えられます。嬉しい変化があった場合でもストレスを感じてしまうお子さんもいます。親御さんとしてはなかなか気づきづらいと思いますが、そういったタイミングもお子さんの様子を注意してみていただければいいかと思います。

3. 受診を考えるべき症状の目安はありますか?

不登校だからといって皆が受診しなくてはいけない訳ではありませんが、頭痛や腹痛など身体の症状がある時は一度小児科など近くのかかりつけの医師へ相談されると良いと思います。心の状態が気になるときや集団生活で過ごしにくさがあるかも…と思われる時に、当院のような児童精神科や発達センターへ受診していただくのもひとつの方法です。たとえば、意欲がわかない、落ちこみがち、なんでもない細かいことが気になる(手がきれいかどうか何度も洗ってしまうなど)、ゲームがやめられず生活リズムが乱れる、睡眠が不規則、学校での集団生活がちょっと苦手、人とコミュニケーションをとることが苦手、集中力がない、忘れ物が多いなどに心当たりがある場合は、早めの受診をおすすめします。当院のような児童精神科は敷居が高くなってしまうかもしれませんが、本当はもっと気軽に受診していただければと思います。
不登校にはなかなか関わり方に関して明確な正解がなく相談先も少ないので、親御さんが一人で悩まれることが多いと思います。学校の先生や家族に相談しても解決できないとか、悩んでいる内に家族間でのいさかいが多くなり、ますます状況が悪化した…などの相談でも構いません。気軽に相談できるところが欲しいという時も受診のきっかけになるかと思います。治療が必要となれば治療のご提案もしますし、必要があれば他の機関への紹介もさせていただきます。

4. どんな治療を受けることができますか?

まずは診察でお子さんの様子をいろいろと伺います。また、必要に応じて心理検査を行うこともあります。ご本人さんの得意なところや苦手なところが分かりますので、得意なところは伸ばし、苦手なところは補おう、という助言をさせていただきます。睡眠リズムを整える、うつ病などの心の病気の症状が見られる場合は、お薬の治療や公認心理師によるカウンセリングを行うこともあります。絶対安静の方以外は、今の段階でどうしていけば活動が増えるか、何をモチベーションとするか、どこをゴールとするかなど、現実的なものを本人と話し合った上で生活指導をしていきます。作業療法士や言語聴覚士も在籍しておりますので、勉強でつまずいている子は何を苦手に思っているのかを検査しアドバイスします。一旦学校生活から遠ざかるとすぐに学校生活に戻ることが難しい場合もあります。生活リズムを整えるなどリハビリとして“学校ではないところ”で通う練習をすることもひとつの手です。不登校の子のための教室として『適応指導教室』(一宮市では教育支援センター)という公的機関があります。そのような施設への紹介も行っておりますが、当院では「児童・思春期デイケアJOY」でサポートを行っています。

当院で提供できる治療~児童・思春期デイケアJOY~

公認心理師、精神保健福祉士、看護師、作業療法士が在籍しており、心のケアをしつつ活動の幅を広げるよう支え相談に乗っています。活動内容は様々ですが、集団での活動に参加することを目的としたクッキング、野菜の栽培、お楽しみ会などもあります。お子さん同士のコミュニケーションをスタッフが支え、仲間と何かをする楽しさや達成感、充実感を得てもらえればと思っています。ただ無理強いはしないようにしています。自分の好きなことを行う個人活動の時間を作ったり、一人で過ごしたい子は別室で休んだりすることもあります。学校とも連携をとっているので、「そろそろ学校に行ってみたいと言っています」など情報交換をしながらお子さんに沿った治療や支援をしています。教育委員会や学校長の判断で、JOYへ通った日は学校の出席扱いとなる場合もあります。いきなり学校には戻れない、もしくは学校にトラウマを抱えてしまった子には、このような施設に通うことで活動度を上げ、その上で本人が望んだ時に学校へ戻る…という段階を踏んでいます。
JOYに興味がある方はこちら

5. 学校との関わり方など、親の対応はどうすれば良いですか?

臨機応変さが必要になりますが、親御さんが自分だけで抱え込まないで、学校の先生や専門機関とよく相談して欲しいと思います。家族の中だとお母さんだけが抱え込むのでなく、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃんとも共有してほしいと思います。親御さんにとっても、お子さんが学校に行けなくなることはとてもショックな出来事だと思います。しかし、お子さんを問い詰めたり、何が何でも学校に行かせようとすると、親子関係を悪化させることにつながるかもしれません。まずは焦らず、お子さんに“寄り添う”ことが大切です。長期化することも多い問題ですが、家族が疲れきってしまうのは良くありません。そのためにも家族で抱え込まないで学校、専門機関や当院のような医療機関などと一緒に考えていくことが家族の負担を軽くすることにつながると思います。家族皆が笑顔で楽しみを持っていきいきと過ごすことが、お子さんにも良い影響をもたらすのではないかと考えています。