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子育て中の公認心理師が教える!子育てのイライラを抑えるプチテクニック


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西村 勇人
( にしむら はやと )
主な資格/公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士
所属学会/日本認知・行動療法学会

上林記念病院にて11年勤務。臨床心理士・公認心理師。主に精神科外来や入院病棟をメインにカウンセリングや心理検査、集団プログラムを担当。こども発達センターあおむしでは中学生以下の患者さんへのカウンセリングや心理検査、発達障害のお子さんを持つ保護者にペアレントトレーニングを実施。現在子育て真っ最中 小学校3年生と年長の子をもつ2児の父。

ペアレントトレーニングとは?

発達障害のお子さんを持つ保護者へ行う、こどもとの上手な関わり方、ほめ方について学ぶプログラム。あおむしにかかりつけ保護者を対象に実施中。参加した父母の子育ての困難感、ストレス、ゆううつ感の軽減が認められている。

認知行動療法研究 2022 年 48 巻 2 号 p. 217-224

1. 子育てでの悩みって何が多い?

厚生労働省のデータによると、4人中3人の親御さんが子育てに悩みを抱えているといわれています。悩みの原因1位は『子育ての出費がかさむ』、2位は『体が疲れる』、3位は『時間に余裕がない』となっています。これらはまとめると『物理的に余裕がない』という点に起因します。そして4位は『気持ちに余裕を持ってこどもと接することができない』となっていますが、実はこの相談を受けることがとても多いです。家を出る時間なのにおもちゃで遊び始めるこどもを見てイライラしてしまう。イライラして怒ると、怒った自分に対して「あんなに怒らなくてもよかったのに…」と落ち込んでしまう。このような悩みは、皆さんも経験があるのではないでしょうか?

2. イライラしてしまう原因は?

イライラするのは、親が思っている予定(期待)通りにいかないからです。小学生のお子さんを持つお母さんたちは、きっと朝が一番イライラしますよね。7時にはこどもを起こして朝食を食べさせ、8時前には集団登校の分団や通園バスを待たなくてはいけない。そんな忙しい中で「○分ぐらいでご飯は食べてほしい」、「この間に洗濯は干したい」のような「自分の中のルール」のようなものがありませんか?そしてその通りにいかないとイライラしてしまう。このようにイライラには、自分の中の期待やルールが大きく関わっているのです。他にも、例えばおこさんがご飯をぼろぼろこぼす時に「もーっ!」と思ってしまうのは「きれいに食べてほしい」という期待があるからですし、何度言っても着替えてくれずにイライラするというのも「1回言えばわかるだろう」と期待しているからです。

3. イライラを減らすには?

ではそのイライラを減らすにはどうすれば良いのでしょうか?大きく2つの方法があります。1つ目は、自分が持っている当たり前の水準を下げることです。親が思う「当たり前」と、こどもが思う「当たり前」には大きな差があるかもしれません。例えば、箸がまだ持てない子に「箸で食べなさい」というのは難しいので、「じゃあスプーンでいいよ」と本人ができるレベルまで下げてみてはどうでしょう。こどもの成長を思うあまり、自分の期待を押し付けてしまう気持ちは誰でも持っていると思います。でも「どうしてうちの子はできないんだろう?」「何か問題があるのかな?」と周りと比べる必要はありません。ペースは様々ですが、子供は必ず成長し、できることは増えていきます。
2つ目は、こどもは失敗する生き物だと思うことです。失敗する生き物とはどういうことでしょうか。例えば、宿題が上手くできず何度もやり直すうちに、イライラして消しゴムの勢いで紙を破いてしまう。「やりたくない!」と言いながら、挑戦しても失敗してしまう。でもこどもも、失敗したくて失敗しているわけではありません。それを怒り続けると、こどもはいろんなことに挑戦できなくなってしまいます。失敗しない人間に育つことは難しいかもしれませんが、失敗しても挑戦し続ける人間に育つことならできると思いますし、こどもにはそうあってほしいと思います。
当たり前の水準をさげたり、こどもは失敗する生き物だと思うとイライラが減り、こどもへの対応がうまくできるようになるかもしれませんね。

4. こどもをのびのび育てるコツ

こどもをのびのび育てるコツを、3つお話します。1つ目は、しっかり褒めること。お子さんが何かを頑張ったとき、思いっきり褒めて下さい。こどもは上手に褒められるとますます頑張ることができます。『褒める』というと、「よく頑張ったね」と口で伝えることをイメージされると思いますが、子育て上手な人の『褒める』は少し違います。ハイタッチやこちょこちょ、肩車、あるいは一緒に運動したり、美味しいもの食べに行くなど、口だけではなく、こどもが喜ぶコミュニケーションをすることです。さらに、上手な褒め方をするには、年齢とともに「手を変え品を変え」でその子にあった褒め方をすることがとても大切です。
2つ目は褒めるタイミングです。お子さんが何かを頑張った後に褒めることが多いと思いますが、上手な人はもっと前にお子さんを褒めます。例えば、苦手なものを食べるときです。苦手なピーマンだけがお皿に散乱しています。お子さんがピーマンを前に佇んだ後、お箸を持ちました。この時に褒めるのです。やる気をあおるように、「おっ!ついにお箸を持ちました!さあ!次はどうなる!?」と言うと、こどもは乗ってやってくれたりします。これも『褒める』なのです。達成するまでの一連の流れの、一番最初の段階で褒めること。これを私は「10%ルール」と呼んでいます。100%ではなく10%で褒める。最初で褒められると、こどもは乗ってくれて最後まで頑張ることが多い。完了まで待つと、大体途中で気がそれてしまいますから。
最後の3つ目は、前のお話と重なる部分もありますが、親の理想ではなく、出来そうなことを目標にしようということです。ちょっと頑張ればできることを目標設定していれば、こどもがそれをできた⇒褒める⇒また頑張れる…という、好循環が生まれます。上手に褒めて、小さな成功体験をさせて、次も頑張るきっかけにする、ということです。

子育ては楽しいことばかりではなく、大変なことも多いと思います。1歳には1歳の悩みがあるし、大きくなっても悩みは尽きません。やはりイライラしてしまうことは多いと思います。その原因やこれらの方法を意識して、イライラを少しでも減らせてもらえたらと思います。それでもうまくいかない時、あまりにも落ち込んで悩んでしまった時は、誰かに話すことがとても大切ですので、保育士さんや学校の先生、保健センターや市の子育て支援の窓口などどこでも大丈夫です。もちろん医療機関でもOKです。誰かにSOSを投げることが、親御さんだけでなく、こどもたちのためにも大事なことと覚えておいてください。