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40歳以上の20人に一人が発症 緑内障 知っておきたい5つのこと


水野 友広(みずの ともひろ)

眼科部長
  • 主な資格|日本眼科学会認定眼科専門医
  • 得意分野|緑内障手術、網膜硝子体手術、白内障手術など

1. 緑内障とは?

目の奥の神経の通り道である「視神経乳頭」がダメージを受けて変形すると、そこを通る神経が圧迫され視野が欠けます。それが緑内障です。原因は主に目の中の圧力、「眼圧」です。眼圧が高いと視神経乳頭が圧迫されるのです。しかし日本人の場合、眼圧は正常(基準内)なのに神経が痛んでいく「正常眼圧緑内障」の患者さんも多くいらっしゃいます。ただ、どのようなタイプであっても緑内障で唯一有効な治療は眼圧を下げることです。
もう一つ、緑内障の視野障害が出る前の段階で「前視野緑内障」というものがあります。これは、視野障害としてはまだ出ていないけど目の奥の神経の異常はもう始まっている、という状態です。実は視野が欠け始める前に、すでに神経のダメージは進んでいるのです。これは眼圧値だけで判断することは難しく、眼底検査(瞳孔を広げての眼底観察、画像検査など)を行うことで診断します。昨今、この「前視野緑内障」も管理していきましょうという流れになってきています。

2. 緑内障を見つける方法は?

緑内障は予防が難しい疾患のため、早期発見・早期治療が大切です。
緑内障を診断するためには、眼科医師が直接目の奥の神経の状態を観察したり視野検査を行うことで診断していきます。それに加え、最近は「画像検査」もかなり精度が上がってきました。『光干渉断層計(OCT)』という神経の断面を撮影できる機器を使用することで、より精度の高い診断が可能になったのです。
40歳を過ぎたら、まずは健康診断でも構わないので年に1回は眼の検査を受けていただきたいです。そこから眼科でさらに詳しい検査を行い早期発見へとつなげていきましょう。

光干渉断層計(OCT)の撮影データ

3. 自覚症状はあるの?

緑内障は40歳以上の20人に1人が発症するといわれています。しかし、多くの方が緑内障を発症していることに気付いていないのです。実際に受診され緑内障と診断されても、本人は「え! そうなの!?」という反応をされることもよくあります。視力は悪くない、よく見えている、車も運転しているけど…っといった状態です。ではなぜ自覚できないのかというと、緑内障は一般的にはまず周辺の視野から欠けていく病気だからです。さらに、障害された視野の部分は、霞んだりぼやけて見えたり完全に欠損したりしますが、両目で見ているためにお互いに視野を補い、脳で映像が処理されてしまうため症状は自覚しにくいのです。緑内障が末期まで進行してしまうと視野の中心が欠けてくるので、そこでやっと自覚します。しかし、その段階では重症の緑内障になってしまっています。

4. 緑内障はなおらない?

緑内障は治る病気ではありません。しかし、治療をおこなえば進行を遅らせることが出来ます。私たちの目的は「一生涯にわたって見える目を残す」ということです。年齢や眼圧値、どのようなタイプの緑内障なのか等、様々な状況で治療方針が決まります。ですから、患者さん一人ひとりの環境や要望をしっかりとお聞きした上で、「○○さんの治療方法、○○さんの目標眼圧はここに設定しましょう」と決めていくことになります。

一宮西病院 眼科チームの目的は…

「一生涯にわたって見える目を残す」

5. どんな治療になるの?

目的はただ一つ。患者さんの「見たい!」という思いに応えること。

緑内障の唯一の治療は眼圧を下げることです。そのためには、まずは点眼(目薬)治療を行います。それ以外にも、レーザー治療や手術を必要とするケースもあります。どの治療も目的は目の中の水の量を抑え眼圧を下げることです。最近は小さい傷で行える手術(MIGS / 低侵襲緑内障手術)が発達し、これまでよりも眼に負担をかけずに手術を行うことが可能となりました(ただし、かなり進行して重症化している場合や、緑内障病型の問題でMIGSの適応にはならない場合もあります)。現在、手術治療は急速に発展していますが、点眼薬などの薬物治療の開発も進んでおり、緑内障患者さんの8~9割は点眼薬による眼圧管理だけで、一生涯ものを見ることが可能と言われています。しかし、いろいろな事情で目薬を続けられない方もいます。一生涯の目薬を減らせるのであれば…というのも、手術を選択する大きな理由のひとつになると思います。まずは点眼から始めることになりますが、患者さんの生活環境や点眼状況、緑内障の進行具合などを考慮し、適切なタイミングでその時々に合った治療法をご提案・ご提供していくことを心がけています。

メッセージ

まず大切なのは早期発見に努めることです。その上で治療通院をしっかりおこなえば、多くの方が一生涯ものが見える、生活できる視機能を残すことができる、ということをぜひ理解していただきたいです。そしていろいろな事情があるかと思いますが、思いを全て医師に話してください。点眼治療や手術治療など緑内障治療は日々進歩しています。皆さん一人ひとりに最も適した治療方法をご提案させていただきます。

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