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大腸がん (結腸がん・直腸がん)


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日本における大腸がんは増加の一途をたどっており、
がんによる死亡原因では男性で第2位、女性では第1位となっています。
※本ページに掲載されている情報は、2025年10月時点のものです。

大腸がんとは

部位別がん罹患数(2021年)
出典: 厚生労働省「全国がん登録 罹患数・率 報告 2021
部位別がん死亡数(2023年)
出典: 厚生労働省「2023年人口動態統計(確定数)
大腸がん(Colon Cancer)とは大腸に発生する悪性腫瘍の総称で、大きく結腸がんと直腸がんに分けられます。日本人では直腸とS状結腸にがんができやすいといわれており、直腸とS状結腸を合わせると全体の半数以上を占めています※1。近年、日本では食生活の欧米化や高齢化にともない、大腸がんの患者数は増加の一途をたどっており、悪性新生物による死亡原因では男性で2位、女性では1位※2となっています。
大腸がんの発生パターンは、良性の大腸ポリープががん化する場合、粘膜上に直接がんが生じる場合、慢性的な炎症からがんが発生する場合、遺伝などがあります。

初期の段階では自覚症状が乏しいことが多いものの、早期に発見できれば内視鏡による切除で治癒が期待できるケースもあります。そのため、検診で見つけることが最も重要になります。

大腸とは

大腸は、小腸と肛門をつなぐ長さ約1~1.5mの臓器で、結腸(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)と直腸に分かれており、小腸を取り囲むように配置されています。主な役割は、消化・吸収を終えた食べ物から水分やナトリウムを吸収し、便を形成することです。また、大腸には大腸菌や乳酸菌など100種類以上の細菌が住み、食物繊維をエネルギー源として分解したり、感染予防の役割を担ったりしています。
大腸がんの部位別発生頻度
出典: 国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院 消化管内科, 朴 成和: 国がん中央病院 がん攻略シリーズ 最先端治療 大腸がん,13, 法研, 2018.
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ご自身またはご家族や身近な方で、「大腸がん」や「大腸ポリープ」と診断された方はいますか?
早期の大腸がんであれば、内視鏡による切除で治癒が期待できることを知っていましたか?

大腸がんの症状

根治できるような初期の大腸がんは症状がほとんどありませんが、進行すると腸の内腔が狭くなり便秘や下痢が出現します。また、便に血液が混じる(血便)、便が細くなる、貧血、腹痛、体重が減る、お腹にしこりができるなどの症状が出現してくるようであれば要注意です。さらに進行すると、腸閉塞や腸に穴が開く消化管穿孔を引き起こし、緊急手術となることもあります。

「便に血が混じる」「便通の変化が続く」場合は、痔などと自己判断せず、医療機関を受診することが大切です。
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大腸がんの原因

原因はほかのがんと同様に、食事(野菜を食べない、赤身肉(牛、豚、羊、馬、ヤギ)や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)をよく食べる)や運動不足などの生活習慣だと考えられており、中でも飲酒や過度な喫煙、肥満はリスクを上げる大きな要因です。
初回検査の所見に基づく 5.5年以内の進行性腫瘍のリスク比
初回検査時の所見 発生頻度
非腫瘍性ポリープ 1.00
腺腫性ポリープ
10mm以下 2.56
1〜2個 1.92
3個以上 5.01
10mm以下 6.40
絨毛状腺腫 6.05
粘膜内がん 6.87
浸潤がん 13.56
*非腫瘍性ポリープ=腫瘍性ではない(=がん化リスクが低い)ポリープ。
出典: Lieverman DA, Weiss DG, Harford WV, et al. Five-year colon surveillance after screening colonoscopy. Gastroenterology 2007;133:1077-1085
また、過去に大腸ポリープが見つかったことがある方は、大腸がんを発症するリスクが高いことが知られています。ポリープは一度切除しても再発することがあり、また大腸の細胞が異常を起こしやすい体質や生活習慣も影響します。特に大腸ポリープの中でも腫瘍性のもの(腺腫)は、時間の経過とともにがんに進行することがあるため、ポリープの段階で適切に切除することが大腸がんの予防につながります。
大腸がんにおける家族歴(親等別)と発症年齢別リスク
近親度 大腸がんの発症年齢 大腸がんのリスク
第1度近親者
(親子、兄弟・姉妹)
50歳未満 6
全年齢 2.64
第2度近親者
(おじ・おば、甥、祖父母、孫)
50歳未満 3.09
全年齢 1.96
第3度近親者
(いとこ、曾祖父母、曾孫)
50歳未満 1.56
全年齢 1.3
出典1: Todd, B. (2021). Family history a risk for early-onset colorectal cancer. American Journal of Nursing, 121(12), 59.
出典2: Ochs-Balcom, H. M., et al. (2021). Early-onset colorectal cancer risk extends to second-degree relatives. Cancer Epidemiology, 73, 101973.
さらに遺伝との関連性も指摘されており、家族に大腸がんもしくは胃がん、子宮体がん、卵巣がんなどを患った方がいる場合には、がんになりやすい体質の可能性があり、注意が必要です。
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次の生活習慣のうち、当てはまるものはありますか?(複数回答可)

大腸がんの検査方法

確定診断

  • 病理検査

病期診断

  • 画像検査(CT検査・MRI検査など)

便潜血検査

便潜血検査の病変別感度
便潜血検査(Fecal Occult Blood Test)は、健康診断やドックで大腸がんのスクリーニングを目的におこなわれる、安全・簡単・安価な検査です。大腸がんの表面はもろく出血しやすいという性質を利用して、便中に目に見えないような微量な血液が混入していないかを確認します。
便潜血検査における便採取回数別感度・特異度
感度
(がんの人を正しく陽性と判断する力)
特異度
(がんがない人を正しく陰性と判断する力)
1日法 56% 97%
2日法 83% 96%
3日法 89% 94%
出典: Nakama H, Yamamoto M, Kamijo N, Li T, Wei N, Fattah AS, Zhang B. Colonoscopic evaluation of immunochemical fecal occult blood test for detection of colorectal neoplasia. Hepatogastroenterology. 1999 Jan-Feb;46(25):228-231.
がんからの出血はするときもあればしないときもあるなど間欠的なため、2日間の便を採取する2日法でおこないます。ただし、便潜血検査1回の感度(大腸がんが便潜血検査で陽性となる割合)は、進行大腸がんで約70%です。進行大腸がんを患っていても、約3分の1は陰性と判定されることがあり、必ず陽性となるわけではありません。また、大腸がん以外の原因(痔核など)でも陽性となることがあります。ですが、スクリーニングの目的は大腸がんの早期発見ですので、便潜血検査が一度でも陽性となった場合は、大腸内視鏡検査などの二次検診(精密検査)を受けることをおすすめします。
検診発見可能点
症状発現点
5〜7年
便潜血陽性者の精密検査受診率は70.4%とやや低く、実際に精密検査を受けた方の中で大腸がんが発見される確率は2.99%です※3。多くの大腸がんは、10年以上かけて腺腫(良性の大腸ポリープ)からゆっくりと発育増大し、進行したがんになります。そのため、毎年便潜血検査を受けていただければ、大腸がんを早期に発見できる確率が高まりますし、便潜血検査を毎年おこなうことで死亡率を約60%低下させる効果があると報告されています※4

*例外的に非常に短期間で大きくなる場合もあります。

二次検診(精密検査)について

長所 短所
大腸内視鏡
  • 組織検査や治療も可能
  • 平坦な病変、小さなポリープも見つけやすい
  • 内視鏡挿入時に苦痛を伴うことがある
  • 腸のヒダの裏側の病変は見つけにくい
  • 内視鏡で腸内を傷つける可能性がある
CTコロノグラフィー
  • 苦痛が少なく、検査時間も短い
  • 腹部全体を撮影するため、大腸以外の臓器の診断ができる
  • 腸のヒダの裏側まで確認できる
  • 組織検査や治療はできない
  • 平坦な病変や小さなポリープは検出しにくい
  • X線を使用するため、妊娠している可能性のある方は受けることができない
大腸カプセル内視鏡
  • 苦痛はほぼない
  • 恥ずかしくない
  • 保険診療でおこなうには条件がある
  • 組織検査や治療はできない
  • 小さなポリープは検出しにくい
  • 下剤の量が多い
  • 検査時間がかかる
  • 検査費用がかかる
大腸がんの発生パターンとして、良性のポリープ(腺腫)が大きくなる過程でがん化するといったものがあります。そのため、大腸ポリープを発見し治療することは、大腸がんのリスク低減につながるといえます。

便潜血検査で陽性となった場合、大腸がんや大腸ポリープを検査するために二次検診(精密検査)をおこなうことになります。二次検診には、主に大腸内視鏡検査CTコロノグラフィー(大腸CT)検査があり、2014年からは条件付きで大腸カプセル内視鏡検査が保険適用となりました。

大腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査(Colonoscopy)は、肛門から直径12~13mmの内視鏡を挿入し、大腸の内部を調べる検査です。大腸粘膜をカメラで直接観察できるので、5mm以下の小さな病変も見つけやすいといった特長があります。前処置である腸の洗浄が十分でない場合には詳細な検査が難しくなることがあるため、事前に2L程度の下剤を飲んでいただき、大腸をきれいにしてから検査をおこないます。

がんやポリープなどの病変が見つかった場合には、ズームアップして病変表面の模様を観察し、より詳細な診断をおこなったり、必要に応じて細胞の採取や病変の切除をおこなうこともできます。大腸がんの発見が早期であるほど内視鏡での切除が簡易になり、予後も安定します。

検査中の痛みは個人差が大きいですが、苦痛が強い場合には鎮痛剤や鎮静剤を使用することもあります。

CTコロノグラフィー(大腸CT)検査

CTコロノグラフィー(大腸CT)検査(CT Colonography)は前処置をおこなった後、肛門からチューブを挿入して、炭酸ガスを注入し大腸全体を十分に拡張させた状態でCT撮影を実施します。得られたCT画像から、あたかも内視鏡検査をおこなったような3Dの仮想内視鏡像を作成し、観察と診断をおこないます。5mm以下の小さなポリープや平坦なポリープは発見が難しいことがありますが、10mm以上の病変であれば内視鏡検査とほぼ同等の情報が得られるとされています。

画像診断のため、ポリープやがんが見つかっても生検や切除はできませんので、後日あらためて大腸内視鏡検査を受けていただくことになります。また、検査中は大腸が拡張することによりお腹の張りを感じることがあります。
CTコロノグラフィーの検出率
病変の大きさ 感度
(がんの人を正しく陽性と判断する力)
特異度
(がんがない人を正しく陰性と判断する力)
10mm以上 90% 86%
6mm以上 78% 88%
出典: Johnson CD, Chen MH, Toledano AY, et al. Accuracy of CT colonography for detection of large adenomas and cancers. New England Journal of Medicine. 2008;359(12):1207–1217.

大腸カプセル内視鏡検査

大腸カプセル内視鏡検査(Colon Capsule Endoscopy)は、超小型カメラを内蔵した約30mmのカプセル型の内視鏡を口から飲み込んでおこないます。カプセルは消化器官を通過しながら画像を撮影し、記録装置に転送された画像をもとに解析します。日本では、大腸内視鏡検査では内視鏡の挿入が困難な方や、内視鏡検査のリスクが非常に高い方に限って保険適用されています。

検査前には、内視鏡検査と同様下剤を飲んで大腸をきれいにします。また、大腸カプセル内視鏡を飲んだ後にも、カプセル内視鏡の排出を促すために追加の下剤を飲む必要があります。

CTコロノグラフィー検査同様、画像診断のため、ポリープやがんが見つかっても生検や切除はできませんので、後日あらためて大腸内視鏡検査を受けていただくことになります。

腫瘍マーカー検査

大腸がんのステージ別腫瘍マーカー陽性率
出典: Yamashita K, Watanabe M. Clinical significance of tumor markers and an emerging perspective on colorectal cancer. Cancer Sci. 2009;100:195–199.
大腸がんの診断や経過観察に用いられる検査のひとつに、血液中の腫瘍マーカーを測定する腫瘍マーカー検査(Tumor Marker Test)があります。腫瘍マーカーとは、主にがん細胞によって作られる物質のことで、大腸がんではCEA(がん胎児性抗原)(Carcinoembryonic Antigen)やCA19-9(Carbohydrate Antigen 19-9)が代表的です。血液を採取するだけで測定できるため、体への負担は非常に小さい検査です。

しかし、近年の臨床研究によると、腫瘍マーカーは大腸がんの早期発見にはほとんど意味がないとされています。初期の大腸がんでは腫瘍マーカーの値が上がらないことが多く、値が正常であってもがんが存在する可能性があります。そのため、早期発見を目的としたスクリーニングとしては信頼性が低く、血液検査だけで「大腸がんがない」と判断することはできません。

腫瘍マーカーは、手術後の再発の有無や進行がんの経過観察の参考として利用されることが多く、単独での検査では限界があります。そのため、大腸がんの早期発見には、便潜血検査大腸内視鏡検査が現在の標準的な検査方法とされています。

大腸がんの進行度

大腸がんの進行度は、がんが大腸の壁のどの深さまで達しているか(深達度)(T因子)、リンパ節への転移の有無(N因子)、そして肝臓や肺などの離れた臓器への転移の有無(M因子)によって決まります。
大腸がんの深達度(T因子)

Tis がんが粘膜内にとどまっている
T1 がんが粘膜下層にとどまっている
T2 がんが固有筋層に浸潤している
T3 がんが固有筋層を越えて浸潤している
T4a がんが漿膜を越えて浸潤している
T4b がんが大腸に接している臓器に浸潤している
深達度とは“がんの根の深さ”のことで、早期の大腸がんは粘膜内にとどまっていますが、進行すると筋肉の層や周囲の組織にまで広がることがあります。

また、がんがリンパの流れに沿ってリンパ節に広がることをリンパ行性転移、血液の流れに沿って肝臓や肺などに広がることを血行性転移と呼びます。さらに、大腸の壁を破ってお腹の中に散らばるように転移する腹膜播種もあります。
大腸がんのステージ分類

ステージ0粘膜の中にとどまっている。

ステージⅠ固有筋層(筋肉の層)までにとどまっている。

ステージⅡ固有筋層を越えて周囲に広がっている。

ステージⅢ深達度に関係なく、リンパ節に転移している。

ステージⅣ肝臓や肺、腹膜など離れた臓器に転移している。

これらの状態を組み合わせて、大腸がんはステージ0からⅣまでに分類されます。大腸がんの治療方針を考えるうえで、まずこの進行度を理解することが重要です。

大腸がんの治療

大腸がんの治療についての図があります。ステージ0およびステージ1のうち浸潤が浅いものに対しては内視鏡治療。ステージ1のうち浸潤が深いものおよびステージ2とステージ3、ステージ4のうちほかの臓器への転移巣が取り切れるものに対しては手術治療。加えて、ステージ2のうち再発リスクが高いものおよびステージ3に対しては補助化学療法も併用。ステージ4のうちほかの臓器への転移巣が取り切れないものに対しては化学療法・放射線治療をおこないます。

病期 治療方針
ステージ0 内視鏡治療
ステージⅠ 浸潤が浅い
浸潤が深い 手術(腸管切除+リンパ節郭清)
ステージⅡ 再発リスクが低い
再発リスクが高い 手術(腸管切除+リンパ節郭清)
補助化学療法
ステージⅢ
ステージⅣ ほかの臓器への
転移巣が取り切れる
手術(原発巣の切除+転移巣の切除)
ほかの臓器への
転移巣が取り切れない
化学療法放射線治療など
※治療は病状によって異なります。
大腸がんの治療は、がんの進行度(病期)や発生部位、患者さまの全身状態によって選択されます。主な治療法には内視鏡治療外科治療(手術)薬物療法(化学療法)放射線治療などがあります。

内視鏡治療

がんが粘膜内にとどまる早期の段階(ステージ0)では、大腸内視鏡を用いた病変部の切除が可能です。体への負担が少なく、術後1週間程度で治療前と同じような日常生活を送ることができるなど、治療後の回復も早いのが特徴です。

術後数日から1週間ほどは消化の良い食事を心がけ、お酒は控えてください。また、腹圧がかかるような動作や激しい運動も避けるようにしましょう。

切除された病変は病理検査をおこない、再発やリンパ節への転移の危険性がないかを確認します。その後、がんをしっかり取りきれたと判断された場合、特別な通院は必要ありません。おおよそ1年後に大腸内視鏡検査を受けて経過を確認し、異常(がんや新たなポリープなど)がなければ、その後は3年ごとの検査で経過観察をおこなうのが望ましいとされています。
内視鏡的粘膜切除術
(EMR)
内視鏡的粘膜下層剥離術
(ESD)
腫瘍径の制限 2cmまで 制限なし
手技の難易度 易しい 難しい
施行時間 数分 数十分〜数時間
穿孔率 低い
(0.02〜0.08%)
高い
(3.0%)
内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)

①茎のある形をした病変に対しておこないます。

②病変部に輪状のワイヤー(スネア)をかけます。

③スネアを少しずつ締めます。

④高周波電流を使って病変部を焼き切るようにして切除します。

内視鏡的粘膜切除術(EMR)

①病変の下の粘膜下層に薬液(生理食塩水など)を注入して、病変部を持ち上げます。

②浮き上がった病変部の根もとに輪状のワイヤー(スネア)をかけます。

③スネアを少しずつ締め、高周波電流を使って病変部を焼き切るようにして切除します。

④切除後に出血や切除した状態を観察します。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

①病変のまわりに電気メスで小さな点をつけ、切除範囲の目印をマーキングします。

②病変の下の粘膜下層に薬液(生理食塩水やヒアルロン酸など)を注入して、病変部を持ち上げます。

③病変部の粘膜をマーキングの少し外側から切り込み、周囲の粘膜から切り離していきます。

④電気メスで病変部をめくってはがすように切除します。その後、出血や切除した状態を観察します。

外科治療(手術)

①がんのある部分から安全域をとって大腸を切除し、転移の可能性がある範囲(リンパ節)を切除します。

②残った腸管をつなぎ合わせます。

内視鏡での病変切除が難しい場合、がんの部位とあわせて、がんが広がっている可能性のある腸管とリンパ節もあわせて切除する手術がおこなわれます。手術後はリハビリテーション(ウォーキングやストレッチなど)をおこないながら、1〜2ヶ月ほどで日常生活に戻られる方が多くみられます。

外科手術の場合は、がんのステージや手術の内容によって、術後の経過観察の方法が異なります。手術後にがんが残っている可能性も完全には否定できませんので、定期的な検査を通じて慎重に経過を見守ることが大切です。具体的には、術後3ヶ月ごとの血液検査、半年ごとのCT検査で再発の有無を確認します。

開腹手術での切開創の例

ロボット支援下手術での切開創の例

また、近年では腹腔鏡下手術やロボット支援下手術など、体への負担を軽減する低侵襲手術も増えています。

結腸がんの手術

回盲部切除術

結腸右半切除術

結腸部分切除術

S状結腸切除術

直腸がんの手術

【肛門を残す手術】
括約筋温存手術(前方切除術)

①がんから肛門側に2〜3cm離して切除します。

②残った腸管をつなぎ合わせます。

【肛門を残さない手術】
直腸切断術(マイルズ手術)

①直腸と肛門を切除します。

②人工肛門(ストーマ)をつくります。

薬物療法(化学療法)

大腸がんの治療は手術によるがんの切除が基本となりますが、手術だけで完全にがん細胞を取り除けない場合や再発の可能性がある場合に、薬物療法(化学療法)がおこなわれます。日本では手術後におこなう術後化学療法が主流で、再発リスクを下げることを目的とした補助化学療法と、切除が難しい進行・再発がんに対して延命をめざす化学療法の2種類があります。

まず、薬物療法をおこなう前に、手術で切除した組織を詳細に調べ、再発リスクを評価したうえで化学療法を実施するか判断をします。また、この際、MSI検査やRAS・BRAF遺伝子変異解析などの遺伝子検査(バイオマーカー検査)をおこなうことがあります。近年では、遺伝子検査の結果に基づいて、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせる個別化治療が普及しており、より患者さまに合わせた治療が可能になっています。
このように、病理検査や遺伝子検査の結果は、再発の可能性を予測したり、一人ひとりの患者さまに最適な薬剤を選ぶうえで重要な情報となります。
対象 治療の目的
再発リスクの高いステージⅡ
  • 再発リスクの低下
  • 治癒率の向上
ステージⅢ
ステージⅣ
(進行・再発がん)
  • がんの進行抑制
  • 症状の緩和
  • 延命
  • 生活の質(QOL)の維持
“再発リスクをできる限り下げること”を目的とした補助化学療法では、ステージⅡの一部(再発リスクが高い場合)およびステージⅢを対象に、3ヶ月または6ヶ月のスケジュールで治療をおこないます。副作用をできるだけ抑えながら、予定された期間と薬剤量を守って治療を継続することが大切です。

一方、がんが他の臓器に転移したステージⅣ(進行・再発がん)では、根治ではなく“延命と症状の緩和”が治療の目的となります。治療期間に制限はなく、効果が続く限り継続しておこなわれます。また、治療によってがんの縮小が認められた場合には、原発巣(最初にがんが発生した部分)の切除が可能となることもあります。

*状態によっては1年間おこなう場合もあります。

術前化学療法

近年では、手術の前に化学療法をおこなう術前化学療法(TNT(Total Neoadjuvant Therapy)を含む)の有効性も研究されています。しかし、現時点では術後化学療法が標準的な治療であり、術前化学療法はまだ研究段階にあります。

放射線治療

放射線治療は、高エネルギーの放射線をあててがん細胞を破壊・縮小させる治療法です。大腸がんのうち、特に直腸がんに対しておこなわれることが多く、手術薬物療法と組み合わせて実施されます。

大腸がんに対する放射線治療には、直腸がんの骨盤内での再発抑制や肛門の温存を目的としておこなう補助放射線療法と、がんによる症状を和らげる目的でおこなう緩和的放射線療法の2種類があります。
補助放射線療法

切除が可能な直腸がんを対象に、骨盤内での再発予防や、術前に腫瘍を小さくして肛門を温存することを目的としておこないます。照射時期によって術前照射、術中照射、術後照射の3つにわけられ、術前照射では薬物療法とともに実施されることが多くあります。

緩和的放射線療法

がんの根治を目指すものではなく、がんによって生じる痛みや出血、神経症状などを和らげることを目的としておこないます。

放射線治療の副作用には、治療中に起こる早期副作用と、治療終了後に現れる晩期副作用があります。治療中には、だるさ・吐き気・下痢・皮膚の炎症などがみられることがあり、照射する部位によって症状は異なりますが、多くは時間の経過とともに改善します。一方で、長期的には腸管や膀胱の炎症や出血などがみられる場合もあるため、治療後も定期的な経過観察が大切です。

大腸がん検診を受けない理由

大腸がん検診受診率
(2022年)
出典: 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査
大腸がん検診受診者における要精密検査の受診状況
(2022年度)
出典: 厚生労働省「令和4年度地域保健・健康増進事業報告
大腸がん検診「受けなかった人」の非受診理由
(2024年)
1 特に自覚症状もないから 26.1%
2 検査費用がかかるから 19.7%
3 内視鏡検査(大腸カメラ)をするのが嫌だから 18.1%
4 検査を受けるのがつらい、嫌だから 14.9%
5 健康診断や血液検査など、定期的に検査しているから 12.5%
6 検診の予約をするのが億劫だから 11.3%
7 検診に行く時間が取れないから 10.7%
8 身体に負担がかかりそうなイメージだから 8.8%
9 便潜血検査(検便)が面倒・嫌だから 8.4%
10 病気が見つかるのが怖いから 7.1%
11 市区町村、職場から検診案内がきた記憶がないから 3.7%
12 どの検診会場や医療機関で受けたら良いか分からないから 3.3%
13 検査方法が分からないから 3.1%
14 2022年度に検診/人間ドック等で検査したから 3.1%
15 コロナ禍以降、検査を受けるのが不安になったから 3.0%
16 家族や親族に大腸がん疾患者はいなく遺伝リスクも少ないから 2.7%
17 検診を受けても効果が期待できないから 2.1%
18 大腸の病気に関して自覚症状が有り、既に医療機関を受診しているから 1.0%
19 その他 3.2%
20 あてはまるものはない 20.8%
2022年の大腸がん検診受診率は45.9%※5にとどまっており、いまだ多くの方が検診を受けていません。検診を受けなかった方に最も多い理由は「自覚症状がない」というもので、症状がないためにまだ大きな問題はないと感じる方が多いようです。ですが、初期の大腸がんには自覚症状がほとんどないことが多いため、症状がなくても定期的に検査を受けることが早期発見のために非常に重要です。

また、「辛そう」「恥ずかしい」といった心理的ハードルから大腸内視鏡検査を避ける方も少なくありません。内視鏡検査は痛みや羞恥心への不安から敬遠されやすい検査ですが、実際には麻酔や鎮静剤を用いて比較的快適に受けられる場合もありますし、内視鏡を挿入しないCTコロノグラフィー(大腸CT)検査という選択肢もあります。

検診を受けることで早期にがんを発見し、治療の選択肢を広げることが可能になるため、こうした不安や誤解を少しでも解消することが大切です。
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定期的に大腸がん検診(便潜血検査など)を受けていますか?
検査をためらう・受けない理由として、当てはまるものは?

大腸がんの生存率と早期発見の重要性

大腸がんのステージ別 5年生存率
出典: 大腸癌研究会・全国登録 2008〜2013年症例
大腸がんは、早期に発見できれば高い確率で治癒が期待できるがんです。統計によると、ステージⅠで発見された場合の5年生存率は93.1%と非常に高いのに対し、ステージⅣ(転移がある場合)では26.7%まで低下します※6

大腸がんは比較的ゆっくり進行するため、定期的な検診による早期発見が極めて重要です。特に40歳を過ぎたら、年に一度は便潜血検査を受け、必要に応じて大腸内視鏡検査などの二次検診(精密検査)をおこなうことが推奨されます。早期の段階では自覚症状がほとんどないため、“症状がない=問題がない”ではないことを意識し、検診の機会を積極的に活用することが大切です。

大腸がんを予防するには

大腸がんを予防するために
  • 適度な運動を習慣づける
  • ほどよい体型の維持
  • 野菜や果物など、食物繊維をしっかり摂る
  • 赤身肉や加工肉を食べすぎない
  • 喫煙を控える
  • 過度な飲酒を控える
    (多くても1日1合(ビール500ml)程度まで)
  • 定期的に検診を受ける
大腸がんを予防するためには、食生活と生活習慣の見直しが大切です。特に野菜をしっかり摂ること適度な運動を続けることが重要とされています。

野菜には豊富な食物繊維が含まれており、腸内の発がん物質を含む不要物を排出しやすくします。食物繊維を十分に摂ることで便通が整い、発がん物質が腸内に長くとどまるのを防ぐことができます。(厚生労働省は1日あたり350g以上の野菜摂取を推奨)

また、体を動かすことも大切です。有酸素運動(軽く汗がにじむ程度のウォーキングなど)によって腸の動きが活発になり、便通が促進されます。これもまた、発がん物質を腸内に滞らせずに排出する助けとなります。

このように、“野菜を食べること”と“体を動かすこと”はどちらも腸内環境を整え、大腸がんのリスクを下げるうえで欠かせないものなのです。
年齢階級別罹患率 大腸(2021年)
出典: 厚生労働省「全国がん登録 罹患数・率 報告 2021
また、罹患リスクは40歳ごろから徐々に上昇し、50歳ごろにはさらに高くなることがわかっています。そのため、40歳からは大腸がん検診の受診が推奨されています。肝臓や肺などに転移した状態で発見されると根治は難しくなりますが、早期発見・早期治療できれば治る病気ですので、積極的に検診を受けるようにしてください。
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まとめ

精密検査未受診者の大腸がん死亡のリスク比
精密検査の受診状況 リスク比
全がん
(対象者830人)
受診者 1.00
未受診者 4.80
浸潤がん
(対象者300人)
受診者 1.00
未受診者 4.07
出典: 松田一夫ほか. 精検の精度管理 精検未受診群の癌. 厚生省がん研究助成金「大腸がん検診の合理的な検診方法に関する臨床疫学的研究」平成13年度報告書2001;30-33.
大腸がんは、早期に見つけて適切に治療すれば、治る可能性が高いがんです。そのため、「症状が出てから」ではなく、「症状が出る前」に検診を受けることが何より大切です。検診で異常を指摘されたら、恐れずにきちんと精密検査を受けることをおすすめいたします。

出典
  1. 国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院 消化管内科, 朴 成和: 国がん中央病院 がん攻略シリーズ 最先端治療 大腸がん,13, 法研, 2018.
  2. 厚生労働省「2023年人口動態統計(確定数)
  3. 厚生労働省「令和4年度地域保健・健康増進事業報告
  4. Saito H, Soma Y, Koeda J et al. Reduction in risk of mortality from colorectal cancer by fecal occult blood screening with immunochemical hemagglutination test. A case-control study. Int J Cancer. 1995 May 16;61(4):465-469.
  5. 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査
  6. 大腸癌研究会・全国登録 2008〜2013年症例

コラム監修

一宮西病院
消化器内科部長 / 消化器内視鏡センター長
東 玲治

1999年、名古屋市立大学卒業。岡山大学病院、福山市民病院、鳥取市立病院、亀田総合病院附属幕張クリニック、広島市立市民病院を経て、2019年より一宮西病院。

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コラム監修 (薬物療法)

一宮西病院
腫瘍内科部長
松本 俊彦

2004年、金沢医科大学卒業。金沢医科大学病院で初期研修後、姫路赤十字病院で後期研修。その後、四国がんセンター、姫路赤十字病院、神戸市立医療センター中央市民病院、関西医科大学附属病院を経て、2023年より一宮西病院。

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コラム監修 (放射線治療)

一宮西病院
放射線治療科部長
野中 穂高

2008年、旭川医科大学卒業。静岡市立清水病院で初期研修。その後、浜松医科大学医学部附属病院、山梨大学医学部附属病院、富士吉田市立病院、富士市立中央病院を経て、2025年より一宮西病院。趣味は漫画。

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