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脊髄・脊椎疾患について




手術用顕微鏡や内視鏡で低侵襲手術を実施

脳神経外科では、脊椎脊髄領域の治療にも重点を置いております。当科での手術方法の特徴は、手術用顕微鏡を用いることで低侵襲(できるだけ小さなキズで、筋組織を温存し、神経組織を愛護的に扱うこと)な手術を行っていることです。最近では、腰椎椎間板ヘルニアで条件がそろえば、内視鏡での手術も施行しております。代表的な疾患の治療方法を以下にご紹介します。


頸椎椎間板ヘルニア、頸椎症

頚椎は、7つの骨(椎体といいます)が連なって形成されています。骨と骨の間には、弾性を持った「椎間板」が存在します。これにより、頭部をささえ、頚部の柔軟な運動が可能となっています。加齢をはじめとして、さまざまな要因で、椎間板が変形し後方へ出っ張り、脊髄や脊髄の枝である神経根を圧迫することがあります。これを頸椎椎間板ヘルニアといいます。(ヘルニアとは本来の位置から逸脱した状態のことをいいます)。また、後方(図では右側)の黄色靭帯が肥厚し、脊髄を圧迫する病態を変形性頸椎症と呼ぶこともあります。

頸椎椎間板ヘルニア、頸椎症

● 症状

上肢のしびれや痛み、肩甲骨部の痛みが中心となります。首の向きで痛みが誘発される場合もあります。病状によっては、手の細かい動作が下手になる(箸を上手く使えない、ペットボトルのふたを開けられない、字が下手になったなど)、歩きにくくなるなどの症状が出ます。

● 治療方法

一般に、症状が痛みやしびれの場合は、薬剤を中心とした保存的治療(手術以外の治療という意味です)が中心となります。一方で、薬剤で痛みが改善しない場合や歩行に障害が生じている場合は、手術治療が考慮されます。

● 手術の具体的な方法

前方からと後方からの2つの方法があります。どちらが適しているかは患者様の病状によって変わります。
どちらの術式でも、通常10日~14日間の入院となります。手術は全身麻酔で行い、術翌日(遅くとも術後2日目)から歩行開始となります。また、術後に頸椎カラーを装着する必要がありますが、通常1~2週間で外すことが可能となります。
(1)頸椎前方除圧固定術:前方からの手術
椎間板ヘルニアそのものを直接除去することができるため、ヘルニアなどの前方からの圧迫が主な場合は治療効果が高いです。ただし、ヘルニア切除後は、椎体(骨のことです)をチタン製のケージで固定するため、2か所程度までとなります。

頸椎前方除圧固定術:前方からの手術

(左)術直後:チタン製のケージが挿入されている、(右)術後2年:ケージが骨に包まれ、上下の椎体が癒合

(2)椎弓形成術:後方からの手術
脊髄が通る骨の中のトンネル(脊柱管といいます)を広げることで、脊髄を後方に逃がすのを目的とします。3か所以上の除圧も可能であり、複数個所の除圧が必要な場合に適しています。

椎弓形成術:後方からの手術

脊髄管の前後径が1.5~2倍に拡大します(赤矢印)

椎弓形成術:後方からの手術

(左)術前:赤丸部分で髄液を示す白い部分が消失、(右)術後:髄液を示す白い部分が出現している


後縦靭帯骨化症

後縦靭帯は背骨(椎体)の後面を裏打ちし、背骨を固定する役目を果たしております。首から腰まで存在します。背骨の後面は脊柱管の一部を形成しており、後縦靭帯は脊髄のすぐ前方に存在します。この靭帯が骨化し、大きくなることで脊髄を圧迫する病気が、頚椎後縦靭帯骨化症です。原因不明で、女性より男性に多く、50歳前後で発症することが多いということが知られています。また、糖尿病を合併することが多いです。日本人に多く発症し(有病率2%前後とされています)、現在、厚生労働省の特定疾患にも指定されています。本疾患の場合、年月をかけてゆっくりと脊髄を圧迫するため、高度の圧迫になるまで症状がでにくいという特徴があります。いったん発症すると、症状が進行する可能性がありますが、全例が必ずしも進行するわけではありません。どのような症例は進行するのか、まだ十分解明されていません。逆に、一旦発症すると自然に軽快することはほとんどないとされています。また、外傷などで急激に症状が悪化することがあり、その場合回復率は芳しくないなどの特徴があります。

● 症状

症状は頚椎症と同様であり、手のしびれ、痛み、細かい動作ができない、歩きにくいなどの症状がでます。

● 治療方法

手のしびれや痛みなど症状が比較的軽い場合は、内服をはじめとした保存的治療(手術以外の治療方法)で経過をみます。この場合でも、首を捻るような外傷で症状が急激に悪化することがあるため、注意が必要です。

● 手術の具体的な方法

後縦靭帯骨化症の場合、前方からと後方からの二通りの手術方法があります。
(1)前方からの手術の場合
椎体を削除し、骨化している後縦靭帯そのものを切除します。脊髄を圧迫している後縦靭帯そのものを切除するので根治性が高いのが特徴です。椎体そのものの再建が必要となり、骨癒合が進むまで、およそ術後2~3か月程度、頸椎カラーを着用する必要があります。通常は骨化した靭帯が2~3椎体に留まる場合に本術式が考慮されます。

前方からの手術の場合

(左)術前:骨化した靭帯により脊髄は圧迫されている、(右)術後:骨化した靭帯は切除され、脊髄の圧迫は無くなった

(2)後方からの手術の場合
頚椎症の後方手術と同じで、椎弓形成術となります。この手術の場合、後縦靭帯そのものは切除せず、後方より脊柱管を拡大することで脊髄の逃げ場を作ることを目的とします。多椎間(長い距離)を除圧することが可能で、術後の頚椎カラー装着の期間は通常数週間となります。

後方からの手術の場合

(左)術前、(右)術後

術前は骨化した靭帯が脊髄を圧迫している。術後、脊髄の周囲に髄液(白い部分)が出現し、圧迫が解除されている。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎(腰の骨のことです)は、5つの骨から形成されています。脊髄からつながる馬尾は、骨のトンネル(脊柱管といいます)の中を走行しています。また骨と骨の間に弾力を持ち、クッションのような役割をしているのが椎間板です。椎間板が神経に向かってでっぱり、神経を圧迫する病気を腰椎椎間板ヘルニアといいます。加齢やスポーツなどによる腰部への負担が誘因になるといわれています。

● 症状

臀部から下肢にかけての痛みやしびれが生じます。ときに足のつま先があがりにくくなることがあり、この場合は受診を急ぐ必要があります。

● 治療方法

腰椎椎間板ヘルニアの治療は、薬、理学療法(牽引や温熱治療などによるリハビリ)、ブロック療法などの保存的治療(手術以外の治療という意味です)が原則です。これらの治療を行っても疼痛が緩和されない場合や下肢の麻痺が出ている場合は手術が考慮されます。

● 手術の具体的な方法

Love法と内視鏡手術の2つの方法があります。
(1)Love法
椎弓と呼ばれる骨の一部を切除し、ヘルニアを顕微鏡下で摘出します。最も標準的な術式になります。椎間板ヘルニアの多くの症例で本術式が用いられ、最もポピュラーな術式といえます。全身麻酔下で腰部を約3.5cm切開します。片側の筋肉を骨から剥離し、片側の椎弓の一部を切除することでヘルニアを切除します。通常、手術の翌日から歩行可能であり、入院期間は7日~10日間となります。

Love法

(左)術前、(右)術後:ヘルニアは消失している

(2)経皮的腰椎椎間板ヘルニア切除術(内視鏡での手術)
腰部の外側に2cm弱の皮膚切開を設け、内視鏡にてヘルニアを切除します。局所麻酔で施行可能であり、翌日には退院可能となります。
ただし当科では安全性を最優先するために、骨の変形が少ない、椎間板の高さが保たれている、ヘルニアが上下方向には脱出していないなどの条件を満たした場合のみに限定しております。よく質問を受けるレーザー治療は、保険適応外であり、当院では行っておりません。

経皮的腰椎椎間板ヘルニア切除術(内視鏡での手術)


腰部脊柱管狭窄症

前方から椎間板ヘルニアが出っ張り、後方からは黄色靭帯が肥厚し、神経の通り道である脊柱管が狭くなり、症状を出す病気です。多くは、加齢を主とした変性が原因となります。

腰部脊柱管狭窄症

● 症状

歩いていると徐々に下肢が張ってきたり、痛みが生じて休憩が必要となり、長い距離を歩けなくなります。これを間欠性跛行といいます。自転車やスーパーのカートなど少し前かがみで歩くと、歩ける距離が延びたり休憩が不要になるのが特徴です。また、患者様によっては安静時にも臀部や下肢の痛みを伴うこともあります。

● 治療方法

内服治療から開始します。多くの場合、血流を改善するプロスタグランジン製剤を使用することになります。また下肢痛に対しては、鎮痛剤の内服を行います。症状によっては、理学療法や物療を行うこともあります。一定期間これらの治療を行っても症状の改善が得られない場合は、手術治療を考慮します。

● 手術の具体的な方法

後方除圧術と後方除圧固定術の2つの方法があります。
(1)後方除圧術:開窓術
腰部を約4cm(1椎間の場合)切開します。棘突起といわれる骨を真ん中で割る(縦割)ことで、これに付着する筋肉の委縮を防ぎます。椎弓と呼ばれる骨の一部を切除した後に、肥厚した黄色靭帯を除去します。必要に応じて、椎間板ヘルニアも切除します。 通常手術翌日から歩行可能であり、入院は10日~14日間となります。

後方除圧術:開窓術

(左)術前:赤丸は狭窄部。髄液を示す白い部分がなくなっている、(右)術後:赤丸部分で、白い部分が増えている

(2)後方除圧固定術:PLIF(posterior lumbar interbody fixation)またはTLIF(Transforaminal lumbar interbody fusion)
変性が強く、手術後に不安定性が予想される場合は、上記の除圧に金属での固定を追加します。金属はチタン製で、MRI対応のものを使用します。当科の特徴は、透視下にてスクリューを挿入するMIS(最小侵襲手術)のテクニックで行っていることです。これにより、腰部筋肉の損傷が最小限となり、術後の腰部痛が軽減されています。

後方除圧固定術:PLIF

(左)術前、(右)チタン製のスクリューが挿入され、固定されている


圧迫骨折

骨粗しょう症に代表されるように、加齢とともに骨が弱くなってくると、軽度の外力(転んで尻もちをついた等)で圧迫骨折をきたすことがあります。骨折すると強い腰痛が生じます。

● 治療方法

まずは安静と鎮痛剤の内服などの保存的治療を行います。最近ではコルセット着用で早期に離床を行います。多くの場合、保存的治療を数週間から数ヶ月行うことで痛みが緩和し治癒します。 ときに保存的治療を行っても痛みの改善が得られない場合があります。そのような場合は、手術治療が選択肢にあがります。

● 手術の具体的な方法

椎体形成術といいます。最近ではバルーンを用いた方法が多くなっています。具体的には、つぶれた骨の中でバルーンを膨らませることで、骨の中にスペースを作ります。これにより潰れた骨の形がある程度復元します。バルーンで作ったスペースの中に骨セメントを注入します。5mm程度の皮膚切開2か所で行うことが可能で、体力的な負担も少なく済むのが特徴です。多くの症例で、術後早期より除痛効果が得られます。

(1)先端にバルーンが付いた細い金属棒を潰れた骨に挿入します

(1)先端にバルーンが付いた細い金属棒を潰れた骨に挿入します

(2)骨の中でバルーンを膨らませます

(2)骨の中でバルーンを膨らませます

(3)バルーンで作ったスペースに骨セメントを注入します

(3)バルーンで作ったスペースに骨セメントを注入します

(4)骨が安定化し、術後早期に除痛が得られます

(4)骨が安定化し、術後早期に除痛が得られます


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