円形脱毛症
円形脱毛症とは
円形脱毛症では、毛根そのものが失われて跡が残ることはありません。そのため、髪が再び生えてくる可能性は残されています。治療は“なくなった毛根から髪を生やす”ものではなく、毛根への攻撃を鎮め、休んでいる毛根にもう一度働いてもらうことを目指します。
ただし、炎症が長く続いたり、脱毛の範囲が広がったりすると、毛根は小さく縮んだ状態のままになり、回復に時間がかかったり、治療が効きにくくなったりします。症状が続いている場合や広がってきた場合に、早めのご相談をお勧めするのはこのためです。
症状が現れるのは髪や体毛、そして爪だけで、内臓や全身の健康に影響する病気ではありません。人にうつることもありません。
一方で、見た目の変化は日常生活や気持ちに大きく影響します。実際に、多くの方が生活への影響や不安を感じておられることが報告されています。“気にしすぎ”ではありません。気になることは遠慮なくご相談ください。
原因について
ご家族に同じ症状の方がいる場合があり、生まれ持った体質が関わると考えられています。また、甲状腺の病気、貧血、皮膚の一部が白く抜ける病気(尋常性白斑)などをあわせもつことがあり、必要に応じて血液検査で確認します。
経過と見通し
脱毛が1〜数ヶ所にとどまる場合、多くの方は1年以内に回復するとされています。そのため、すぐに強い治療を始めず、塗り薬を使いながら経過を見るという選択をとることもあります。
範囲が広い場合は、時間がかかります
脱毛が頭部の広い範囲に及ぶほど、回復には時間を要します。ただし近年は治療の選択肢が増え、以前は難しかった状態でも改善が期待できるようになりました。
急に広がっているときは、早めの受診を
短期間に頭部全体へ抜け毛が広がっている場合は、早い時期の治療が有効なことがあります。
効果の判断には数ヶ月かかります
髪が伸びる速さには限りがあります。治療を始めてすぐに変化がなくても、慌てる必要はありません。
再発することがあります
一度治っても、再び起こることは珍しくありません。その場合もあらためて診察し、同じように治療できます。
当院での検査・診断
診察とダーモスコピー(拡大鏡)
抜け毛の検査
血液検査
皮膚生検
治療の考え方
- 脱毛の範囲 頭部全体のどのくらいの割合に及んでいるか。おおよそ4分の1以上に及ぶ場合を重い状態と考えます。
- 発症からの時期 急に広がっている時期か、長く続いている状態か。
- 年齢 治療によっては、お子さまにはおこなわないほうがよいとされるものがあります。
治療の種類
炎症を抑えるステロイドの塗り薬を中心に用います。範囲を問わず使え、治療の基本となります。あわせて、頭皮の血のめぐりをよくするフロジン外用液(カルプロニウム塩化物)を使うこともあります。
セファランチン、グリチロン配合錠を塗り薬とあわせて用いることがあります。アレルギー反応や炎症を抑える働きがあり、古くから円形脱毛症に使われてきた薬です。アレルギー体質のある方には、抗アレルギー薬をあわせて用いることもあります。
脱毛している部分の皮膚に、炎症を抑える薬を直接注射します。脱毛の範囲が限られている成人の方に高い効果が期待できます。4〜6週間ごとに繰り返します。注射のときに痛みがあります。
かぶれを起こす薬剤をわざと頭皮に塗り、軽い皮膚炎を起こすことで毛根への攻撃をそらす治療です。脱毛の範囲が広い方や、長く続いている方が対象で、年齢を問わず選べる治療です。はじめに腕などで薬への反応を作り、その後、脱毛部に薄い濃度から塗り始めます。軽いかゆみが2〜3日続く程度を目安に濃度を調整しながら、1〜4週間に1度通院していただきます。
この治療で使う薬剤は国内で医薬品として承認されていないものを当院で調製しています。薬剤の費用は当院で負担するため、追加のご負担はありません。
炎症を抑えるステロイドを、3日間続けて点滴で投与する治療です。短期間に集中しておこなうことで、急速に進む脱毛の勢いを抑えることを目指します。発症してから間もない時期に、脱毛が急速に広がっている成人の方が対象です。発症から時間が経った状態では効果が期待しにくいため、時期を見極めて判断します。
炎症を引き起こす体内の信号の伝達を抑える飲み薬です。頭部の広い範囲に脱毛が及び、長く続いている場合に用います。近年になって円形脱毛症に使えるようになった薬で、治療が可能です。国内ではオルミエント(バリシチニブ)とリットフーロ(リトレシチニブ)が使用できます。
使用できる条件
- 頭部全体のおおよそ50%以上に脱毛があること
- 過去6ヶ月ほど、自然に髪が生えてきていないこと
- 年齢や、ほかの病気の状態などの条件を満たすこと
効果を判断するまでに半年程度かかります。服用中は定期的な血液検査が必要で、飲むのをやめると再び脱毛することがあります。始めるかどうかは、効果と負担の両方をご説明したうえで、ご相談して決めます。
治療にあたって
| 治療 | 主な注意点 |
| ステロイド外用 | 長く使うと皮膚が薄くなる、毛穴の炎症が出ることがあります。 |
| フロジン外用液 | 塗った直後に汗が出ることがあります。入浴直後の使用は避けてください。 |
| 内服薬 | 発疹、むくみ、胃の不快感が出ることがあります。血圧やカリウム値を定期的に確認します。 |
| ステロイド局所注射 | 注射時の痛み、注射部位の一時的なへこみが起こることがあります。 |
| 局所免疫療法 | 強いかぶれ、首のリンパ節の腫れが起こることがあります。反応が強い場合は中断して処置します。 |
| パルス療法 | 不眠、血糖値の上昇などが起こることがあります。持病により実施できないことがあります。 |
| JAK阻害薬 | 感染症にかかりやすくなることがあります。治療前と治療中に検査をおこないます。 |
日常生活について
- 洗髪・ヘアケア 普段通りで構いません。
- 帽子・ウィッグ 使っていただいて問題ありません。
- カラー・パーマ 治療の内容によっては控えていただくことがあります。ご相談ください。
- 仕事・学校 制限はありません。治療のために生活を変える必要はありません。
- 食事・睡眠 特定の食品で治る、悪くなるということはありません。
- 市販の育毛剤・シャンプー 円形脱毛症を治す効果は確かめられていません。自己判断で続けるうちに範囲が広がることもあります。まずは診察を受けてください。
よくある質問
A. はい。円形脱毛症の治療は公的医療保険の対象です。受診の際は保険証をお持ちください。
Q. ストレスが原因ですか?
A. きっかけになることはありますが、それだけが原因ではありません。自分の免疫が自分を攻撃してしまうことにより発症する病気で、はっきりしたきっかけが無いこともあります。
Q. 放っておいても治りますか?
A. 範囲が狭い場合は自然によくなることもあります。ただし、繰り返す場合や範囲が広がってきた場合は、早めに診察を受けてください。
Q. どのくらいで生えてきますか?
A. 髪が伸びる速さには限りがあるため、効果の判断には数ヶ月かかります。また、現れ方には個人差があります。
Q. 一度治りましたが、また抜けてきました。
A. 円形脱毛症は繰り返すことがあります。あらためて状態を確認し、治療方針をご相談します。
Q. 子どもでも受診できますか?
A. はい。円形脱毛症はお子さんにも起こる病気で、当院では年齢を問わず診療しています。お子さんの場合は、塗り薬を中心とした治療から始めます。痛みや体への負担が大きい治療は、原則としておこないません。脱毛の範囲が広い場合には、年齢に応じて使える治療をご相談します。学校生活でのご心配なども、あわせてお聞かせください。
Q. まゆ毛やまつ毛も抜けています。
A. 円形脱毛症は、頭髪以外に及ぶことがあります。あわせてご相談ください。
Q. 市販の育毛剤やシャンプーで治りますか?
A. 円形脱毛症を治す効果は確かめられていません。自己判断で続けるうちに範囲が広がることもありますので、まずは診察を受けてください。

