呼吸器外科
メッセージ
2012年(平成24年)8月に呼吸器外科を開設しました。体制を拡充しながら実績を重ねており、2022年現在では西尾張地区の呼吸器外科医療の中心を担う診療科となっています。主に肺腫瘍(肺がん・転移性肺腫瘍)、縦隔腫瘍(胸腺腫など)、気胸の手術を行っています。診療ガイドラインに基づいた標準治療を軸として、患者さま個々の病状を考慮して最適な治療法を提案します。
対象疾患
- 原発性肺がん
- 転移性肺腫瘍
- 縦隔腫瘍(胸腺腫など)
- 気胸
- 胸部外傷(肋骨骨折など)
胸腔鏡手術(Video-assisted thoracic surgery; VATS)
3〜4か所の小さな傷で手術する方法です。当科では、肺がんの手術は主にこの方法(VATS=「バッツ」)で行っています。胸の中に太さ5 mmの胸腔鏡(カメラ)を入れて、高精細モニターを見ながら操作を行います。開胸手術と比較して、(1) 整容的に優れる、(2) 痛みが少ないことが多い、(3) 虫めがねで見るように拡大視できる、(4) みんながモニターを見ることで情報共有ができる、といった利点があります。高度な技術が必要な手術ですが、当院ではVATSの経験が豊富な専門医が複数在籍しており、お互いに連携しながら手術を進められるため、安全で精度の高い手術が実現できています。強い癒着があり手術が難しい場合、肺をしっかり触診する必要がある場合や、予期しない出血があり止血を急ぐ場合などには傷を延長して開胸手術に切り替えることがあります。
開胸手術(胸腔鏡補助下手術)
8〜15cm程度の傷で、肋骨と肋骨の間を広く切開して胸の中を直接見ながら手術する方法です。胸の中に強い癒着がある場合、がんが大きい場合、がんが大血管や気管支などに浸潤している可能性がある場合など、VATSと比較して安全で確実な手術ができると判断されるときには、開胸で手術を行います。胸腔鏡手術の発展に伴い、徐々に手術件数が少なくなってきました(2021年は呼吸器外科手術の2割弱)。切開の大きさや場所は、患者さまそれぞれの病状等により決めています。
単孔式胸腔鏡手術(Uniportal VATS)
1か所の小さな傷から、胸腔鏡(カメラ)や器具を体内に入れて手術する方法です。当院では、気胸や膿胸、一部の肺がんや転移性肺腫瘍などに対して実施しています。1か所の傷から全ての器具(3〜4本程度)を入れて操作を行うため技術的に難しい手術ですが、当科では2017年から導入しており、2021年までに100例以上の経験があります。複数の傷で行うVATSと比較して、整容性に優れており、痛みも少ない傾向にあると言われています。気胸手術や肺部分切除を行う場合は2 cm前後、肺葉切除や区域切除を行う際は2.5〜4 cm程度の傷で手術を行います。単孔での手術が難しい場合は、数か所小さい傷を増やして通常のVATSに切り替える場合があります。
気胸の治療について、詳しくは気胸センターのページをご覧ください⇩
ロボット支援手術(Robot-assisted thoracoscopic surgery; RATS)
手術支援システム「da Vinci」(ダビンチ)を使用して手術する方法です。手術室に設置されている操作用の機械(コンソール)を執刀医が操作することで手術が進んでいきます(ロボットが自動で手術を行うわけではありません)。ロボット手術を行うためのトレーニングを修了して認定された医師が執刀します。2022年4月現在当科では、肺悪性腫瘍に対する肺葉切除・区域切除、縦隔腫瘍切除、重症筋無力症に対する拡大胸腺切除を保険診療で行うことができます。胸腔鏡手術(VATS)と比較して、3Dカメラで立体的な拡大視ができることや、関節を自分の手のように自由に曲げることができる器具を使用できることがロボット手術の利点です。
呼吸器外科の手術実績(2017年〜2021年)
年 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
手術件数 | 128 | 168 | 184 | 194 | 166 |